日本助産学会誌
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子どものCUEと母親の反応性からみた母子相互作用
―授乳場面の録画分析―
石川 祐子江藤 宏美井村 真澄
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2012 年 26 巻 2 号 p. 264-274

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抄録

目 的
 出産直後から続く育児は,養育者の不慣れや新生児のリズムの不規則さも相まって,大きな負担を感じてマタニティブルースに陥る可能性も高い。本研究は,日本語版Nursing Child Assessment Feeding Scale(日本語版NCAFS)を用いて,生後早期の子どもとその母親の授乳場面における子どものstate,cueとそれに対する母親の反応性を観察し,母子の相互作用を記述することである。また,生後早期に日本語版NCAFSを測定用具として使用する可能性を検討することである。
方 法
 構成的観察項目(日本語版NCAFS)に沿って,生後早期の母子相互作用とそのきっかけとなる母子の合図を明らかにする記述研究である。対象は,生後4日目で医療機関に入院中の初産の母子である。観察には,ネットワークカメラ,マイクなどを室内に固定し,授乳開始後はデジタルビデオカメラを用いて録画した。分析は,撮影時間内で母子の授乳の開始から終了までの場面を,日本語版NCAFSの76項目(0~76点)について採点した。その他,母子の行動を記述した。本研究は,所属および研究実施施設の倫理審査委員会の承認を得て行った。
結 果
 10組の母子の授乳場面の撮影および観察を行った。撮影時間中の授乳回数は平均2.1(SD=0.7)回で,平均授乳分析時間11.3分(SD=4.2)であった。日本語版NCAFS平均得点54.1点(SD=6.1)であった。他の対象者と比較して得点が低めの母子1組が抽出され,日本語版NCAFSの総合得点は42点で,下位尺度である「親の認知発達の促進」の得点が低くなっていた。また,授乳場面の観察から,子どもの生起しやすいcueでは「養育者に手を伸ばす」(親和のcue)や「泣く」「ぐずる」(嫌悪のcue)などが認められ,母親は生起されたすべての嫌悪のcueに対応していた。
結 論
 生後4日目の初産の母子に日本語版NCAFSを用いて観察し,子どものcueと母親の反応性など母子相互作用の特徴が明らかになった。生後1週間以内の母子の日本語版NCAFS得点のカットオフ値の設定,縦断的な母子のフォローアップに日本語版NCAFSが活用できる可能性が示唆された。

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© 2012 日本助産学会
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