日本助産学会誌
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生体インピーダンス法による体水分と妊娠・分娩異常との関連:パイロット・スタディ
中田 かおり
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2013 年 27 巻 1 号 p. 100-110

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抄録
目 的
 生体インピーダンス法による妊婦の体水分をあらわす測定指標と,妊娠・分娩異常との関連を探索する。
対象と方法
 妊娠28週から30週の健康な単胎妊婦を対象とした。データ収集は,①妊娠28~30週,②32~34週,③36~39週,の3回,妊婦健康診査時に実施した。インピーダンス(以下,Imp)の測定には,マルチ周波数体組成計を使用した。妊婦の体水分と関連のある生理学的検査値と妊娠・分娩経過に関するデータは,質問紙と診療録レビューにより収集した。
結 果
 研究協力の承諾を得られた30名の内,研究参加中断の申し出のあった1名を除外した29名を分析対象とした。
 Impと生理学的検査値との関連を分析した結果,妊娠28~30週の合成インピーダンス(Z)が低いほど,体重が重かった(r=-0.415,p<0.05)。妊娠32~34週では,Zが高いほどヘマトクリット値(Hct)が高く(r=0.388,p<0.05),脈圧が大きかった(r=0.464,p<0.05)。Impと妊娠・分娩経過との関連を分析した結果,分娩時に「微弱陣痛」と診断された群(4名)は,そうでなかった群よりもZの平均値が有意に高かった(p<0.05)。「予定日超過(妊娠41週以降)」であった群(4名)(p<0.05)と「分娩後2時間値血圧130/85mmHg以上」であった群(5名)は,そうでなかった群よりもZの平均値が有意に低かった(p<0.01)。また,これらの異常を発症しなかった群のZは,500Ω前後あるいは520Ω前後で推移していた。このことから,妊娠・分娩異常を発症しにくいZの基準域が存在する可能性が示唆された。
結 論
 Impと体水分に関連した生理学的検査値および,特定の妊娠・分娩異常との関連性が示唆された。またZには,異常を発症しにくい基準域が存在する可能性も示唆された。今後,研究方法と分析する変数を精選し,対象数を増やしてこれらの関連性と健康な妊娠・分娩経過につながる指標を探索する,基礎研究が必要である。
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© 2013 日本助産学会
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