抄録
目 的
助産教員が分娩介助実習指導者に対して必要と考える能力の構成因子を明らかにし,それに関連する要因を検討することである。
対象と方法
東日本大震災被災地9県を除く全国の助産師養成機関139校の助産教員に,協力依頼文書と調査用紙を配布し,教員経験3年以上の方に回答を求めて185名の回答該当者から回答を得た。その全てが有効回答であったのでこれを分析対象とした。調査期間は平成23年6月~9月で,調査内容は基本属性及び一般的職務のコンピテンシーに対応させた分娩介助実習指導者の行動88項目について5段階の重要性を問う内容とした。構成因子抽出には因子分析,その構成因子と属性等の関連については,Mann-Whitney U検定,Kruskal-Wallis検定を行った。
結 果
対象の助産教員経験は平均8.97年(SD5.88),助産師臨床経験は平均9.50年(SD5.63)であった。因子分析の結果,【実践者としての助産ケア指導力】,【学生理解を基にした学習目標達成志向】,【学生の状況に応じた指導の創造力】,【状況に応じた人的資源の活用と調整力】,【自己コントロールと指導力の向上意欲】の5因子を抽出し,これらを「助産教員が分娩介助実習指導者に求める能力」と命名した。全体のCronbach'sα係数は.974,各因子は.894~.933であった。どの教育課程の助産教員も【実践者としての助産ケア指導力】の平均得点が最も高い結果であった。助産師臨床経験年数と【自己コントロールと指導力の向上意欲】には有意差が認められ(p<.01),臨床経験が長い群が短い群よりその能力を重要視する結果であった。
結 論
助産教員が分娩介助実習指導者に求める能力の5構成因子のうち,【実践者としての助産ケア指導力】は全ての指導者が最低限備えるべき能力といえる。また,臨床経験のより長い教員は,自己の経験から,分娩介助実習指導には指導者の自己研鑽に基づく高度な指導力の必要性を重要視していると考えられた。