日本助産学会誌
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助産実習と助産師教育の課題
—学士課程助産学生の視点から—
谷口 初美我部山 キヨ子野口 ゆかり仲道 由紀
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2015 年 29 巻 2 号 p. 283-292

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抄録

目 的
 助産師教育移行期における学士課程助産学生の助産実習での経験の意味を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
 記述的現象学を用いて助産実習を終了した学部助産学選択コースの学生6名に半構造化面接を行い,分析はColaizziモデルを用いた。京都大学倫理委員会の承認(承認番号E-1519-1)を受け実施した。
結 果
 最終的に4つのカテゴリーに分類された。カテゴリーI【未知なる分娩介助への不安】では,分娩のイメージがつかず,確信が持てずに介助手順を覚えることで精一杯だった。カテゴリーII【初めての分娩介助実習へのチャレンジ】不安と緊張の初期の分娩介助も,3~4例目でやっと周囲に関心が持て,5例目ぐらいから手の感覚や振り返りができていた。しかし,毎回異なる分娩展開に翻弄され落胆していた。妊産褥婦に深く係わる事で対象者から喜びと同時に慰めを与えられていた。カテゴリーIII【プロフェッショナルへの展望】理想とする助産師との出会いは助産師職への希望となり,臨床経験の浅い先輩の働く姿は励みと同時に自己への不安をもたらした。継続ケアを通して早期からの信頼関係の重要性を実感し,産婦に寄り添うことでの観察力と出産の安全性と同時に産婦・家族に耳を向ける自己の姿勢の変化に気づき自己の成長を見出していた。カテゴリーIV【助産実習カリキュラムの課題】学部の過密スケジュールの中の多施設での助産実習であったため,施設毎の戸惑いと慣れるまでに時間を要した。分娩数の減少で契約実習期間内に到達目標に達成できず,納得のいく達成感が持てないまま助産師として就職する不安を抱いていた。
結 論
 助産実習を通して学生は各段階でさまざまな心的状況を示し自己成長をしていた。異常を早期に発見する観察力と対処方法,学習段階に応じた到達目標と指導法で助産演習・実習を充実する必要が明らかになった。

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© 2015 日本助産学会
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