日本助産学会誌
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29 巻, 2 号
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総説
  • 馬場 香里
    2015 年 29 巻 2 号 p. 207-218
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     児童虐待防止への介入の必要性の判断や介入の評価指標とする児童虐待の本質を捉えた尺度の開発につなげ,さらに将来的な周産期における児童虐待防止への支援の発展と,児童虐待予防活動の基盤づくりへの示唆を得ることを目的とした。
    方 法
     Rodgers(2000)の提唱する概念分析のアプローチ法を用いた。9つのデータベースとして,医中誌Web,CiNii,MEDLINE,CINHAL,PsycINFO,SocINDEX,Minds,National Guideline clearing-house,trip databaseを使用し,検索用語は「児童虐待(child abuse),妊娠(pregnant women),産後(postnatal),育児(child care)」とした。最終的に,英語文献26件,日本語文献32件の計58件と,日本小児科学会の発行している「子ども虐待診療手引き(2014)」を分析対象とした。
    結 果
     5つの属性【養育者から子どもへの一方的な支配関係】【養育者の自覚の有無に関係しない行為】【子どものwell-beingを害する行為】【子どものwell-beingを保つ行為の欠如】【子どもの状況】,5つの先行要件【養育者の要因】【子どもの要因】【社会環境の要因】【複数要因の重なり】【適切な介入の不足】,5つの帰結【子どもの保護】【養育者の否認と孤独】【サバイバーの健康への影響】【母になったサバイバーの苦悩】【世代間伝播】が抽出された。代用語に「child maltreatment」が抽出され,関連概念に「しつけ」「shaken baby syndrome(揺さぶられっこ症候群)」「Munchhausen Syndrome by proxy(代理ミュンヒハウゼン症候群)」が抽出された。分析の結果,本概念を「養育者から子どもへの一方的な支配関係から成る,養育者の自覚の有無に関係しない行為による子どもの状況を基盤とした,子どものwell-beingを害する行為,及び子どものwell-beingを保つ行為の欠如である」と再定義した。
    結 論
     本概念分析の結果は,児童虐待の本質を捉えることにつながり,今後の研究において児童虐待を測る尺度を開発する基盤となりうる。また本概念分析により,児童虐待による子どもへの長期的な健康への影響や,次世代への児童虐待の繰り返しの可能性が示され,児童虐待発生前の妊娠期からの予防の必要性,特に周産期で主な支援対象となる母がサバイバーであった場合の母に対する介入の必要性が示唆された。さらに周産期における児童虐待防止への支援については,妊婦のみならず,そのパートナーや子ども,社会環境も含めて支援対象であると認識し,それらの要因に対する適切な介入が必要である。
  • —学士課程での助産師教育開始前後の調査から—
    大原 良子, 久保田 君枝
    2015 年 29 巻 2 号 p. 219-229
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     豪州での助産師教育は大学院のみで行われていたが,2002年より学士課程でも行われるようになった。これに伴う助産師教育の現状と課題についての知見を得て,2005年より大学院での助産師教育も開始された日本の助産師教育に示唆を得ることを目的に文献レビューを行った。
    方 法
     1995年から2014年までの文献をPubmed,CINHALを用い,「Australia」,「midwifery」,「undergraduate」,「postgraduate」,「education」のキーワード検索及びハンドサーチし,61件を収集した。
    結 果
     助産師教育の現状を具体的に記してある23件を使用した。得られた文献は,看護師免許をもたない助産師教育であるダイレクトエントリー(DE)に関するものがほとんどであった。文献を,「学士課程教育準備期」,「DE教育の開始直後」,「DEの卒業生排出以降」の3つの時期に分けた。「学士課程教育準備期」では,全国助産師教育基準が策定され,共同でDEのカリキュラムを作成する大学もあった。また,大学院でも,助産師としての高度実践者教育へと変更が必要となり,その為の研究がなされた。「DE教育の開始直後」では,DEには社会人入学生と退学者が多いという特徴と,臨床経験のない学生への実習指導の困難さなど課題を抱えることとなった。「DEの卒業生排出以降」ではDE教育を振り返り,共同カリキュラムによる教育の改善,全国助産師基準の改善が行なわれていた。また,全国助産師教育基準はDE学生だけしか遵守していない現状から,関連団体にもこの基準の内容,DE以外の助産師教育基準についての意見を求めていた。
    結 論
     国際的水準の助産師教育を目指した教育基準は課題が多く,国に合った基準へと改善が続いていた。また,学士課程教育導入により,大学院で教育を受けた助産師は,第三次医療施設での合併症妊婦の管理など高度実践助産師としての役割が試行されていた。本論文は,豪州の全助産師教育の現状と課題を研究対象としたが,DEについての報告が主となり,偏ったものとなった。
原著
  • 礒山 あけみ
    2015 年 29 巻 2 号 p. 230-239
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     勤務助産師が行う父親役割獲得を促す支援の実態とその関連要因を明らかにし,周産期における家族ケアシステムの構築を検討するための示唆を得ることを目的とする。
    対象と方法
     病院・診療所に勤務している助産師を対象に,自記式質問紙調査を行った。父親役割獲得を促す支援の項目について因子分析を行い,助産師の属性による得点の差をt検定および一元配置分散分析を用いて分析した。
    結 果
     研究協力者は422名(有効回答率93.6%)であった。因子分析の結果,“父親への支援に対する姿勢”“分娩時の父親役割準備”“父親意識の促進”“ピアサポート促進”“妻へのサポート促進支援”“アタッチメント促進”“父親のニーズに応じた支援”“夫婦間コミュニケーション促進”の8因子が抽出された。各因子に対するCronbachのα係数は0.72~0.95であった。実施率が高かった因子は“妻へのサポート促進支援”,“アタッチメント促進”,“分娩時の父親役割準備”,“父親への支援に対する姿勢”,“夫婦間コミュニケーション促進”であった。父親役割獲得を促す支援は,助産師経験年数や助産師数,両親学級や夫立ちあい分娩および夫への育児指導の有無により有意な差が認められた。
    結 論
     勤務助産師の父親役割獲得を促す支援には助産師経験年数や助産師数が関連していた。父親役割獲得を促すためには,まず助産師が父親自身も親移行の当事者であることを認識すること,そのうえでシステマティックな父親同士の交流の場の提供や,父親になる夫に対するクラス運営・立ちあい出産の導入が有用であることが示唆された。
  • —混合研究法を用いて—
    細坂 泰子, 茅島 江子, 抜田 博子
    2015 年 29 巻 2 号 p. 240-250
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     全国産科施設における新生児清潔ケアの実態と,助産師の新生児清潔ケアに対する思いやケアを実践することの助産師なりの意味づけを混合研究法により明らかにすることである。
    対象と方法
     混合研究法の説明的デザインを用いた。量的データは確率比率抽出法に従い全国の産科施設256施設から自記式質問紙を回収した。項目は属性,日数別の清潔ケア,ケア実施時間等とし,Pearsonの相関係数,多重ロジスティック回帰分析で清潔ケアの関連要因の分析を行った。質的調査は,新生児清潔ケアを実践している助産師5名を対象に半構造化面接を実施し,逐語録から質的・帰納的に分析した。
    結 果
     全国横断調査結果では出産当日はドライテクニック(65.3%)が,生後1日目以降は沐浴(67.9~92.2%)がもっとも多かった。沐浴は9.7分,ドライテクニックは0.8分の所要時間が必要で,沐浴に多くの業務時間が必要であることが示された。多重ロジスティック回帰分析では関東地区は近畿地区に対して2.1倍(p<0.05),看護師数と助産師数の増加でどちらも1.1倍(p<0.05,p<0.01),ドライテクニックを選択する確率を高めた。
     質的調査から“新生児を中心に考えた清潔ケア”,“親を中心に考えた清潔ケア”,“医療者の負担を考えた清潔ケア”,“ゆらぐ新生児清潔ケア”の4つのカテゴリーが抽出された。
    結 論
     混合研究法の結果から,清潔ケアの決定には看護師数と助産師数および地区が関連することが明らかとなった。助産師は新生児の負担や汚れなどのアセスメントから清潔ケアを決定しつつ,新生児と親を意識して新生児と関わっていた。清潔ケアは沐浴の時間的負担や現在までの習慣や文化,施設の規定によっても決定されていたが,実際にケアにあたる助産師の思いは,沐浴かドライテクニックかの選択でゆらいでいることが示唆された。
  • 高畑 香織
    2015 年 29 巻 2 号 p. 251-261
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     分娩前7日間に妊婦が行った陣痛発来への取り組みの実態と分娩誘発の関連を探索することを目的とした。
    対象と方法
     2013年7月から10月に,病院,診療所,助産所20施設にて,正期産児を分娩し条件を満たした褥婦694名に質問紙調査を行った。有効回答を得られた530名(76.3%)について統計的に分析を行った。
    結 果
    1.何らかの陣痛発来への取り組みを実施したのは530名中491名(92.6%)で,その割合は重複回答にて,ウォーキング66%,乳頭刺激55%,スクワット44%,階段昇降42%,鍼灸指圧20%,下剤13%,性交9%であった。
    2.初産婦ローリスク群において,【ウォーキングを中等度の運動強度で1日最低50分以上7日間合計300分以上実施した】グループでは,分娩誘発を有意に減らしており,オッズ比は0.425(95%CI:0.208-0.866)であった。
    3.乳頭刺激は自然な陣痛発来を期待できる方法とされているが,研究で推奨されている方法で実行されていなかった。
    結 論
     陣痛発来への取り組みとして運動が上位を占め,特に初産婦ローリスク群ではウォーキングの実施と誘発減少との関連が認められた。
  • 中田 かおり
    2015 年 29 巻 2 号 p. 262-271
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     「日本語版母乳育児継続の自己効力感尺度(Japanese-Breastfeeding Personal Efficacy Beliefs Inventory; J-BPEBI)」を開発し,信頼性・妥当性を検討した。
    対象と方法
     原版は母乳育児を推進し女性の母乳育児の価値や信念を測定するために開発された22項目のVASである。本研究ではまず,2008年に開発された(旧)日本語版Breastfeeding Personal Efficacy Beliefs Inventoryの日本語の修正と5段階リッカートスケールへの変更を行いJ-BPEBIを作成した。その後,2~3歳の子どもの母親を対象に質問紙調査を行った。質問紙は578部配布し286部を回収,241名を分析対象とした。分析にはSPSSVer. 20を使用した。
    結 果
     母乳育児継続期間は平均1年5か月(SD=9か月)であった。因子分析の結果,J-BPEBIは3因子構造となった。第1因子「母乳育児をより長く継続することをマネジメントする自信」,第2因子「社会的サポートや情報をマネジメントしながら母乳育児を継続する自信」,第3因子「様々な環境や状況をマネジメントしながら母乳育児を継続する自信」と命名した。J-BPEBIと一般性自己効力感との相関はなかったが,母乳育児継続期間との相関が認められた(r=.314, p=.000)。自己効力感に影響する「4つの情報源」のうち「成功体験」と「情動的喚起」との関連が認められた。全項目でのクロンバックα係数は.902であり,下位尺度の信頼性係数は.640~.916であった。
    結 論
     J-BPEBIは22項目3因子構造の尺度であり,構成概念妥当性,併存妥当性が確保された。全項目での信頼性は高く,内部一貫性は確保された。J-BPEBIは母乳育児継続と母乳育児の自己効力感に関する概念を測定する尺度であることが示唆された。
資料
  • 清水 嘉子, 佐々木 美果, 塩澤 綾乃, 宮原 美知留, 赤羽 洋子, 阿部 正子, 藤原 聡子
    2015 年 29 巻 2 号 p. 272-282
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     継続した育児相談で,「母親の心の健康チェックシート」を用いた働きかけの対応を明らかにする。
    対象と方法
     参加した相談者は7名であり,2~3人の母親を受け持ち3回の家庭訪問を行った。母親は20名であり,子ども数は1人が90%,専業主婦が80%であった。子どもの年齢は1歳から2歳に成長する過程にあった。相談時に「母親の心の健康チェックシート(以下チェックシートとする)」を用いた。チェックシートは育児している母親の心理的な健康状態を知るために作成したもので,育児幸福感短縮版尺度13項目,育児ストレス短縮版尺度16項目で構成される。相談時の相談者の働きかけの対応の内容分析をした。加えて3回の相談時の働きかけの対応の変化について分析した。
    結 果
     3回の相談で共通していた働きかけの対応には,【母親の気持ちを受け止める】では,〈子育てで感じている気持ちを受けとめる〉,〈子どもに対する気持ちを受けとめる〉,〈子育てのサポートに対する気持ちを受けとめる〉があった。【母親に気づかせる】では,〈子育てが今のままで良いことに気づかせる〉,【母親を安心させる】では,〈子どもが成長過程にあることを伝える〉,〈他者の反応を伝え安心させる〉,【母親の考え方を認める】では,〈子育てに対する考え方を認める〉があった。また,2回目の育児相談では,〈妊娠による大変さを受けとめる〉,3回目の育児相談では,〈家族を大切に思う気持ちを受けとめる〉,〈周囲の人からほめられたときの気持ちを受けとめる〉,〈自分の将来を考えられていることがよいことであることに気づかせる〉の新たな働きかけの対応があった。
    結 論
     相談者の働きかけの対応は,母親の気持ちを受け止めることが全体の6割を占めており,重要な働きかけの対応となっていた。子どもが成長し,母親としての経験を積んでいくことにより,相談者は母親に気づかせ,考え方を認める働きかけの対応となっていた。また,母親を安心させる働きかけの対応が毎回行われていた。本研究により,チェックシートを用いて様々なことに気づかせる働きかけの対応が明らかになった。
  • —学士課程助産学生の視点から—
    谷口 初美, 我部山 キヨ子, 野口 ゆかり, 仲道 由紀
    2015 年 29 巻 2 号 p. 283-292
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     助産師教育移行期における学士課程助産学生の助産実習での経験の意味を明らかにすることを目的とした。
    対象と方法
     記述的現象学を用いて助産実習を終了した学部助産学選択コースの学生6名に半構造化面接を行い,分析はColaizziモデルを用いた。京都大学倫理委員会の承認(承認番号E-1519-1)を受け実施した。
    結 果
     最終的に4つのカテゴリーに分類された。カテゴリーI【未知なる分娩介助への不安】では,分娩のイメージがつかず,確信が持てずに介助手順を覚えることで精一杯だった。カテゴリーII【初めての分娩介助実習へのチャレンジ】不安と緊張の初期の分娩介助も,3~4例目でやっと周囲に関心が持て,5例目ぐらいから手の感覚や振り返りができていた。しかし,毎回異なる分娩展開に翻弄され落胆していた。妊産褥婦に深く係わる事で対象者から喜びと同時に慰めを与えられていた。カテゴリーIII【プロフェッショナルへの展望】理想とする助産師との出会いは助産師職への希望となり,臨床経験の浅い先輩の働く姿は励みと同時に自己への不安をもたらした。継続ケアを通して早期からの信頼関係の重要性を実感し,産婦に寄り添うことでの観察力と出産の安全性と同時に産婦・家族に耳を向ける自己の姿勢の変化に気づき自己の成長を見出していた。カテゴリーIV【助産実習カリキュラムの課題】学部の過密スケジュールの中の多施設での助産実習であったため,施設毎の戸惑いと慣れるまでに時間を要した。分娩数の減少で契約実習期間内に到達目標に達成できず,納得のいく達成感が持てないまま助産師として就職する不安を抱いていた。
    結 論
     助産実習を通して学生は各段階でさまざまな心的状況を示し自己成長をしていた。異常を早期に発見する観察力と対処方法,学習段階に応じた到達目標と指導法で助産演習・実習を充実する必要が明らかになった。
  • 柴山 知子, 江藤 宏美
    2015 年 29 巻 2 号 p. 293-302
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     分娩第2期に会陰部に温罨法を行うことで,第1度,第2度会陰裂傷の発生を減少させることができるかを明らかにすることである。
    対象・方法
     対象は正期産,経膣分娩予定,単胎,頭位であり,医学的合併症がない初産婦とし,historical controlled trial designを用いた。介入方法は,産婦が子宮口全開大に近い時期から外陰部消毒を行う前まで,温湿タオルを用いて会陰部を温めた。タオルは30分毎に交換し温度を保つようにした。会陰裂傷の程度は,分娩に立ち会った医師が分娩直後に判断した。同時に,産婦の基本的情報を医療記録より収集した。データ分析は,t検定,χ2検定を行った。本研究は倫理委員会の審査を受け,承認を得て実施した。
    結 果
     対象は,介入群49名,コントロール群50名であった。対象者の特性について両群間に有意差はなかった。
     会陰裂傷の発生頻度について,介入群では第1度会陰裂傷は28名(57.1%),第2度会陰裂傷は16名(32.7%)であった。コントロール群では,第1度会陰裂傷は31名(62.0%),第2度会陰裂傷は13名(26.0%),2群間で有意差はなかった(p=0.517)。また,第3度会陰裂傷は介入群3名(6.1%),コントロール群3名(6.0%),第4度会陰裂傷は両群ともに発生しなかった。
     温罨法の実施時間は,介入群で平均2.77±2.43時間であった。温罨法の実施時間と会陰裂傷では,第1度会陰裂傷における温罨法実施時間は平均2.27±2.59時間,第2度3.98±1.99時間,第3度1.85±1.51時間で有意差が認められた(p=0.002)。出血量と温罨法の実施時間,出血量と温罨法開始から児娩出までの時間に有意な相関はなく,温めることによる出血量の増加は見られなかった。
    結 論
     分娩時に会陰部に温罨法を行うことによる第1度,第2度会陰裂傷低減の効果を得ることができなかった。しかし,温罨法は生理学的に皮膚の伸張性の向上や,循環血液量の増加,回復に影響があると言われるheat shock proteinが喚起されるといったメリットがあり,効果が期待できる。今後その時期や方法を検討していく必要がある。
  • 藤田 小矢香, 狩野 鈴子, 濵村 美和子, 嘉藤 恵
    2015 年 29 巻 2 号 p. 303-309
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     妊娠期の講義・演習で1年課程で学ぶ助産師学生が何を習得したと感じていたのか,具体的な学習内容を明らかにすること
    対象と方法
     対象者はA大学短期大学部専攻科助産学専攻学生18名。研究倫理審査委員会の承認を経て,2013年7月に実施した。データ収集方法は,学生が妊娠期講義終了後に提出した,妊娠期の学習で何を習得したと感じたかについての記述を逐語録にしてデータを抽出した。
    結 果
     助産師学生が妊娠期講義で習得したと感じていた内容は大きく2つ示された。【基礎的知識を基に,妊娠期の助産診断を行うこと】では《妊娠期の経過診断を行うための基礎的知識の獲得》《対象に応じた保健指導の実施,ケアを提供すること》であった。【主体的に妊婦を取り巻く人や環境へも目を向け,関わりを深め支援していくこと】では,《妊婦やその家族に思いやりを持って接し,より良い関係を築いていくこと》《知識を生かし,実践により必要な情報を自ら獲得しようとすること》を学んでいた。
    結 論
     助産師学生は,知識の習得だけではなく,対象者への支援,妊婦や家族への配慮を学び,自己学習姿勢を身につけていた。
  • 天谷 まり子
    2015 年 29 巻 2 号 p. 310-318
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    目 的
     糖尿病をもつ女性の妊娠から出産にいたるまでの過程における体験を見出すこと。
    対象と方法
     研究参加者は糖尿病を基礎疾患にもち,妊娠し生児の出産を体験した女性。研究デザインは質的記述的研究とし,データ収集は半構成的面接,分析方法はグラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析手法を用いた。分析レベルはアクシャルコーディング段階までとし,現象の抽出と現象ごとのカテゴリー関連図による,ストーリーラインの生成を行った。
    結 果
     研究参加者は8名であり,初産婦・経産婦,経膣分娩・帝王切開術,1型糖尿病・2型糖尿病と背景はさまざまであった。8名分のデータからカテゴリー関連図をもとにパラダイムを統合させた。結果,糖尿病をもつ女性の妊娠から出産にいたるまでの体験として,【自らの意思により妊娠を選択する】,【試行錯誤の中で主体的に血糖コントロールに挑む】,【妊娠による食事の変化と格闘する】,【おなかの中の子どもをあるがままに受け入れる】という,4つの現象が見出された。また,各々の現象のプロセスとしてのストーリーが導かれた。
    結 論
     糖尿病をもつ女性の妊娠から出産にいたるまでの体験は,自らの意思で妊娠を選択することによる血糖コントロールへの意識の高まり,迷いながらも妊娠中の血糖コントロールにおいて自分に合った方法を主体的に見つけようとする挑戦,妊娠によって迫られる食事の見直しや調整という格闘,おなかの中の子どもを奇形や疾患の有無に関わらず自分の人生の中に受け入れるというものであった。それは,独力で妊娠と糖尿病の適応調整を行うことであり,そこに葛藤や苦痛が伴う体験であった。そのため,助産師においては,糖尿病をもつ女性の主体性を尊重し,そばに寄り添いながら身体的にも心理的,社会的にも支えていくことにより,妊娠や出産にまつわる体験をwell-beingに導くことが望まれる。
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