日本助産学会誌
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総説
助産ケアに対する母親の満足度:過去30年間の研究の動向と国際比較による検証
大関 信子
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キーワード: 母親, 助産ケア, 満足度, 比較, 国外
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2016 年 30 巻 1 号 p. 39-46

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抄録

目 的
 過去30年間の国内外の文献レビューにより,助産ケアを受ける妊産褥婦の満足度について国際比較し,次の30年間の助産ケアの課題を検証していくことを目的とした。
方 法
 国内の文献検索では医中誌web,国外文献はPubMedを用いて文献検索した。キーワードは,国内は「助産ケア(妊娠期のケア/分娩期のケア/産褥期のケア)」「妊産褥婦(妊婦/産婦/褥婦/母親)」「満足度/評価」のキーワードを組み合わせ,「原著」,「1985年から現在まで」の条件で検索した。海外文献のキーワードは,[midwifery care/midwifery practice/midwifery service],[mothers/pregnant women/women in labor/postpartum women/clients],[satisfaction/evaluation]で,これらを組み合わせ,「原著」,「1985年から現在まで」の条件で検索した。
結 果
 国内文献では317件が,国外文献では114件がヒットした。ほとんどの研究は量的研究であり,母親の視点から助産ケアに対する満足度を調査した研究は少なく,国内は12件,国外は28件が条件を満たし分析対象とした。
 国内文献の分析結果,1997年の調査では,助産ケアの満足度が8割で,2012年には9割と上昇がみられたが,信頼性・妥当性を確保する根拠となる研究の数が少なかった。国外では,ニュージーランドの調査で,助産ケアに対する母親の満足度は77%であったが,国外でも信頼性・妥当性を確保する根拠となる研究の数が少なかった。
結 論
 今回の文献レビューから,日本の助産師が取り組むべき次の30年間の課題を検証した。まず,助産ケアに対する母親の満足度の研究の数を増やすことが最優先課題であることが明らかになった。特に1997年に開発された尺度開発の研究を継続していくことは重要である。助産ケアのレベルを,全国均一に上げていくことは,助産ケアの満足度を全国に提示するためには必要なことである。最後に,自然出産を希望する母親たちのために,革新的な助産ケアの在り方の研究が次の30年間の課題であることがわかった。

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© 2016 日本助産学会
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