日本助産学会誌
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原著
側臥位を中心としたフリースタイルと背臥砕石位分娩における母児の身体的リスクの比較
伊藤 由美良村 貞子佐川 正
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2016 年 30 巻 1 号 p. 47-56

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抄録

目 的
 産婦が自由に体位を選択できる分娩が,助産師と医師や妊婦の間に普及するには,その有効性に関する専門的知識は未だ不十分である。本研究は,背臥砕石位と比較し,フリースタイル分娩の母児の身体的な安全性を検証することが目的である。
対象と方法
 正常な単胎妊娠,正期産および自然経腟頭位分娩による健康な母児(N=219)から,フリースタイル群(n=50)を抽出し,背臥砕石位群(n=50)を対照としたマッチングによる症例対照研究(n=100)を行った。
結 果
 フリースタイル群は,初産婦,経産婦とも背臥砕石位群に比し,新生児のアプガースコア1分値が有意に低い(p<0.001)のに対し,経産婦の臍帯動脈血pH値が高かった(p<0.001)。初産婦のフリースタイル群は,背臥砕石位群に比べ,分娩第2期所要時間が有意に長く(p<0.001),産後2時間出血量も多かった(p=0.01)。生後1か月児の体重増加量は,両群間に差がなかった。加えて,初産婦のフリースタイル群における助産師の臨床経験は,分娩第3期所要時間に影響した(寄与率23%, p=0.01)。
結 論
 本研究は,フリースタイル分娩体位が背臥砕石位よりも,新生児の短期のwell-beingとして呼吸と循環の確立に好影響をもたらすこと,さらにフリースタイル分娩では,初産婦の産後2時間の出血量を管理する必要のあることを明らかにした。

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© 2016 日本助産学会
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