日本助産学会誌
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原著
20代女性の出産イメージの特徴
谷津 裕子芥川 有理佐々木 美喜千葉 邦子新田 真弓濱田 真由美山本 由香
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2016 年 30 巻 1 号 p. 57-67

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抄録

目 的
 本研究の目的は,20代女性にみられる出産イメージを,当事者への面接調査によって明らかにすることであった。
対象と方法
 関東圏内に在住する出産経験のない20~29歳の未婚女性33名に非構成的面接法を行なってデータを収集した。得られたデータを帰納的に分析し,研究参加者ごとのコアカテゴリーをパターンコード化し,出産イメージの特徴を見出した。
結 果
 20代女性の出産イメージを示す10の特徴が抽出された。1. 研究参加者のほとんどは出産に対して《肯定的イメージ》と《否定的イメージ》の両方を併せもつ。2. ほとんどの研究参加者の出産イメージには広がりがみられる。3. 《肯定的イメージ》のみをもつか《否定的イメージ》のみをもつ研究参加者がわずかながら存在する。4. 約半数は出産に対して現実味を感じていない。5. 4割強の研究参加者が出産に対して〔痛いもの〕というイメージをもつもののそれが出産への忌避感に結び付いてはいない。6. 《ジェンダー的イメージ》は出産を女性にとって望ましいものとする考え方とそうでない考え方とに二分される。7. 《時間的イメージ》は出産年齢を意識するものと出産時期を意識するものに二分される。8. 研究参加者の3人に1人は,出産と仕事の両立は難しいというイメージをもつ。9. 研究参加者の5人に1人は,出産に対して負い目を感じさせるものというイメージをもつ。10. 《対社会的理想イメージ》には社会に対する不満と期待が反映されている。
結 論
 研究参加者の殆どが出産に対して肯定的イメージと否定的イメージを併せもち,連関的・分散的に多様な意味づけをしていた。研究参加者の約半数が出産に現実味を感じていない背景には,女性の過酷な就労状況,職場や地域社会における家族中心施策の未整備,仕事と出産を両立するロールモデルの不在,男女ともに出産の時期や方法を自律的に選択するための教育の不十分さが存在していた。これらの問題に取り組むことが,少子社会における出産環境の創出に向けた喫緊の課題と考えられた。

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© 2016 日本助産学会
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