日本助産学会誌
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原著
生体インピーダンスによる妊婦の体水分と妊娠·分娩期の異常との関連:パス解析を用いた検討
中田 かおり堀内 成子
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2016 年 30 巻 1 号 p. 78-88

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抄録
目 的
 生体インピーダンスによる妊婦の体水分と関連のある妊娠・分娩期の異常(切迫早産,妊娠高血圧症候群(PIH),低出生体重等)を探索し,関連を検討する。
対象と方法
 妊娠26週から29週の健康な単胎妊婦を対象とした。データ収集は,妊娠26~29週と妊娠34~36週の妊娠中2回と,分娩終了後に実施した。生体インピーダンスの測定には,マルチ周波数体組成計を使用した。妊婦の体水分と関連のある生理学的検査値と妊娠・分娩経過に関するデータは,質問紙と診療録レビューにより収集した。変数間の関連は,パス解析により検討した。
結 果
 研究協力の承諾を得られた340名の内,332名を分析対象とした。生体インピーダンスとの関連性が示唆された妊娠・分娩期の異常は,「切迫早産およびその疑い(妊娠26~29週の測定後から妊娠34~36週の測定まで)」(p<0.01),「妊娠期の血圧上昇(妊娠34~36週の測定後から分娩まで)」(p<0.05),「低出生体重」(p<0.01)であった。「切迫早産およびその疑い」と「低出生体重」はレジスタンス(R)が高く体水分が少ないことが示唆され,「妊娠期の血圧上昇」はRが低く体水分が多いことが示唆された。パス解析の結果,「切迫早産およびその疑い」と「低出生体重」,「妊娠期の血圧上昇」の全てにRあるいはヘモグロビン値(Hb)からのパスを描くことができた。「切迫早産およびその疑い」と「低出生体重」は,RあるいはHbが高く体水分と血漿量が少ない可能性が示唆され,「妊娠期の血圧上昇」ではRが低くHbが高い,つまり体水分は増加しているが血漿量は増加していない,という可能性が示唆された。
結 論
 体水分をあらわす指標と生体インピーダンスおよび,特定の妊娠・分娩期の異常との関連性が示唆された。しかし,異常の予測につながる指標の組み合わせは特定できなかった。今後,妊婦の生活やリスク発見後の対応を考えながら,妊娠期の健康につながる体水分評価指標の組み合わせや基準値を探索する,基礎研究が必要である。
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© 2016 日本助産学会
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