日本助産学会誌
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院内助産で分娩管理を行った生殖補助医療(ART)妊婦の産後過多出血の検討
大島 和美横井 暁柴田 幸子真野 真紀子
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2018 年 32 巻 2 号 p. 169-177

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抄録

目 的

バースセンター(以下BC)は,総合周産期母子医療センターに併設する院内助産施設である。BCでは妊娠分娩経過は正常であっても,出産後に予期せぬ多量出血を経験することがある。生殖補助医療(以下ART)妊娠は癒着胎盤のリスク因子と言われており,且つ癒着胎盤は産科危機的出血の原因となり得る。当施設ではART妊娠であっても院内助産分娩希望があれば,産科医許可のもとBCで分娩を取扱っている。本研究ではART妊娠(新鮮胚移植妊娠,融解胚移植妊娠)の産後過多出血(以下PPH)を検証し,院内助産におけるリスク評価,及び対応を検討した。

対象と方法

研究デザインは症例対照研究である。対象は2013年4月から2016年3月の調査期間中にBCで取り扱った分娩604例で,うち非ART妊娠は567例,ART妊娠は37例(新鮮胚移植9例,融解胚移植28例)であった。非ART妊娠と新鮮胚移植妊娠,融解胚移植妊娠で分娩後出血量,産褥24時間出血量,及びPPH(分娩後出血500ml以上,産褥24時間出血800ml以上)頻度の統計解析を行った。分娩後出血量,産褥24時間出血量を重回帰分析で,PPH頻度を多変量ロジスティック分析により検証した。

結 果

融解胚移植妊娠は分娩後出血量,産褥24時間出血量が非ART妊娠より有意に多く,PPHの頻度は非ART妊娠より有意に高かった。PPHのうち4例が産科危機的出血であったが,うち3例は融解胚移植のART妊婦であった。

結 論

ART妊婦の中でも融解胚移植妊娠はPPHのリスク因子になることが示唆された。融解胚移植妊娠については医師と速やかな医療連携がとれる体制の確立,及び将来的に院内助産分娩の対象から除外すべきか検討するための調査が必要と考える。

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