日本助産学会誌
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東京都における宿泊型産後ケア施設の利用実態と利用者が産後に感じた困難
岡津 愛子江坂 まや大久保 有紀子佐々木 美幸山田 静江片岡 弥恵子
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2021 年 35 巻 2 号 p. 133-144

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抄録

研究の目的

宿泊型産後ケア施設を利用した母親の特性,利用状況,利用動機を明らかにする。また,利用動機に影響を及ぼす利用者が困難と感じた場面を明らかにする。

対象と方法

東京都23区26市5町8村における宿泊型産後ケア施設のうち,研究協力に同意が得られた施設の利用者を対象に,利用者の背景を調査し,産後に困難と感じた場面について自由記述で回答を得た。分析は,統計ソフトを使用し単純集計を行い,自由記述に関しては内容分析を行った。

結 果

各施設において1か月間調査し111部の回答が得た。利用者の年齢は,35~39歳の割合が最も多く39人(35.1%)で,利用者の多くは高齢出産であることが窺えた。利用開始時期は,産後1週間未満が39人(35.1%)と最も多かった。宿泊型産後ケア施設を利用した産後の母親は,【頻回な授乳と児の泣きにより眠れないとき】が辛く,【産後の身体的痛みや苦痛がある中で育児をしなければならないとき】に困難を感じていた。また,【思い通りに母乳育児ができないとき】や【児の成長・発達・体調に対する判断が分からないとき】に難しさ感じ,【イメージに反した育児に自己判断と対応ができないとき】や【漠然とした不安と孤独に適応できないとき】があった。【家族役割変化により家族とのやりとりがうまくいかないとき】や【他者との比較から自己嫌悪に陥ったとき】があり,【仕事復帰や金銭面に不安を感じたとき】があった。

結 論

宿泊型産後ケア施設を利用した母親は,高齢出産や分娩のハイリスク化,無痛分娩増加を背景に,産後の身体回復や母親の体調と児の個性にあった授乳に困難を感じていた。

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