目 的
母乳育児の意思がどのような要因によって決定されているのかを,日本語版IIFASを含む行動計画理論に基づいて明らかにする。
対象と方法
分娩を扱う病院・クリニック(14施設)で,妊娠後期の妊婦を対象に調査を行った。調査は母乳育児への意思,乳児授乳への知識・態度を測定する日本語版 IIFAS,主観的規範,行動コントロール感,対象者の属性についてたずねる無記名の自記式質問紙票郵送法とした。
結 果
有効回答数は285部で回収率は52.9%だった。平均年齢は31.3(±4.6)歳,初産婦157人(55.1%),経産婦128人(44.9%)だった。
IIFASのスコアの平均は58.4点(±5.9)で,意思別では,絶対母乳で育てたい:15名(5.3%)63.7点,できれば母乳で育てたい:181名(63.7%)59.1点,どちらでもよい:15名(5.3%)54.7点,混合栄養で育てたい:68名(23.9%)56.1点,人工乳で育てたい:5名(1.8%)57.2点だった。群間比較の結果,母乳育児希望群のスコアが有意に高かった。
母乳育児希望とそれ以外の2群に分けて分析を行った結果,IIFAS,主観的規範,行動コントロール感のスコアが高いほうが,また,教育年数が長い,自分が保健医療専門職,自営業・家族経営・賃金労働にはついていない,母乳カウンセリングを受けた,過去の授乳方法が母乳育児,過去の授乳方法に満足,という特徴と母乳育児の希望に有意な関連が見られた。ロジスティック回帰分析の結果,IIFASは母乳育児への意思に関連していた(p<.001)。
結 論
母乳育児への意思は計画的行動理論で説明できた。母乳育児への意思を支えるためには,IIFASを用いて本人の母乳育児に対するとらえ方や価値観をふまえるだけでなく,就業状況,経産婦ではそれに加え過去の授乳経験を理解したうえで,助産師による個別的な支援が必要である。
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