日本助産学会誌
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35 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 松岡 悦子
    2021 年 35 巻 2 号 p. 101-112
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    [早期公開] 公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    目 的

    戦前の大日本産婆会総会並大会の議案をもとに,大日本産婆会の運営と課題を明らかにする。

    対象と方法

    現存する大日本産婆会総会並大会誌(1929年~1943年)と産婆関連雑誌を対象に文献研究を行う。

    結 果

    産婆は業権確立,地位向上を目指して全国組織としての大日本産婆会を1927年に設立した。大日本産婆会には会長がおらず,年に1度の大会を主催した府県の産婆会長が1年間のみ理事長として会を統括した。また多くの道府県の産婆会長には産婆ではなく医師がなっていた。大日本産婆会総会並大会誌から主として3つのことが明らかになった。1つは,産婆が医師や素人産婆との間の境界を明確にし,産婆の業権を確立しようとしていたことである。このことは,産婆が緊急時に注射などの処置をできるように産婆規則を変えること,医師が正常産を扱わないようにすること,素人産婆が出産介助をしないようにすることといった議案に示されている。2つ目には,勃興した社会事業が産婆の生活に大きな影響を与えるようになったことである。昭和前半期には都市の貧困層への対策として無料や安い費用で出産を介助する産院が登場し,また健康保険が導入され,独立開業の産婆の生活が脅かされるようになった。3つ目に戦時体制の影響がある。1938年以降大会の議案は綿の配給を求めるものが多くなり,また乳児死亡率の低減を目的として導入された保健婦と産婆との職域の違いが問題化されるようになった。しかし,産婆は出産介助を通じて国に貢献することを自分たちの使命と考え,戦争協力を惜しまなかった。

    結 論

    大日本産婆会の議題から,政府は医師や看護職との職能上の微妙な関係を考慮して,産婆の地位を法的に確立することに慎重だったことがわかる。また大日本産婆会は,産婆の業権を確立する法律の制定を目指したが,戦争の影響下にあってかなわなかった。戦前の大日本産婆会が抱えていた課題を知ることで,現在の助産師の社会的位置を新たな視点でとらえ直すことが可能になる。

原著
  • 德永 明日香, 金澤 悠喜, 川野 亜津子
    2021 年 35 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目 的

    産後のメンタルヘルスにおいて,産後うつ病は重篤な有害疾患である。日本では,産後うつ病のスクリーニングにエジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)の日本語版が用いられているが,リスクのあるすべての母親をスクリーニングするためにはまだ課題が残るとされている。そこで,EPDSと併用できる母親の心理状態を反映した客観的な指標を検討する必要があると考えた。本研究では,産後1ヶ月時点での母親の心理状態と尿中カテコールアミンおよびセロトニンとの関係を検討した。

    方 法

    EPDSと日本語版POMS-2を用いて,母親の産後の心理状態を測定した。尿中カテコールアミンとセロトニンをストレス反応とうつ病の指標として測定した。背景因子は,年齢,分娩経験,分娩方法,支援状況,授乳状況であった。産後1ヶ月検診時に94人の女性からデータを収集した。

    結 果

    尿中ノルアドレナリン値の高さは,EPDSスコアと関連していた。また,夫のサポート不足は,POMS-2の総合的気分状態【TMD】,混乱-当惑【CB】,抑うつ-不安【DD】スコアの上昇と関連していた。さらに,初産婦はPOMS-2の緊張-不安【TA】スコアが高く,混合栄養や人工栄養の母親は混乱-当惑【CB】スコアが高かった。

    結 論

    これらの結果は,尿中ノルアドレナリンが産後の母親のうつ病を反映していることを示唆している。さらに,夫のサポート,初産婦,授乳状況についての背景因子も母親の心理状態に関係することが明らかとなった。

資料
  • 斎藤 佳奈, 猿田 了子
    2021 年 35 巻 2 号 p. 122-132
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    [早期公開] 公開日: 2021/09/11
    ジャーナル フリー

    目 的

    母乳育児の意思がどのような要因によって決定されているのかを,日本語版IIFASを含む行動計画理論に基づいて明らかにする。

    対象と方法

    分娩を扱う病院・クリニック(14施設)で,妊娠後期の妊婦を対象に調査を行った。調査は母乳育児への意思,乳児授乳への知識・態度を測定する日本語版 IIFAS,主観的規範,行動コントロール感,対象者の属性についてたずねる無記名の自記式質問紙票郵送法とした。

    結 果

    有効回答数は285部で回収率は52.9%だった。平均年齢は31.3(±4.6)歳,初産婦157人(55.1%),経産婦128人(44.9%)だった。

    IIFASのスコアの平均は58.4点(±5.9)で,意思別では,絶対母乳で育てたい:15名(5.3%)63.7点,できれば母乳で育てたい:181名(63.7%)59.1点,どちらでもよい:15名(5.3%)54.7点,混合栄養で育てたい:68名(23.9%)56.1点,人工乳で育てたい:5名(1.8%)57.2点だった。群間比較の結果,母乳育児希望群のスコアが有意に高かった。

    母乳育児希望とそれ以外の2群に分けて分析を行った結果,IIFAS,主観的規範,行動コントロール感のスコアが高いほうが,また,教育年数が長い,自分が保健医療専門職,自営業・家族経営・賃金労働にはついていない,母乳カウンセリングを受けた,過去の授乳方法が母乳育児,過去の授乳方法に満足,という特徴と母乳育児の希望に有意な関連が見られた。ロジスティック回帰分析の結果,IIFASは母乳育児への意思に関連していた(p<.001)。

    結 論

    母乳育児への意思は計画的行動理論で説明できた。母乳育児への意思を支えるためには,IIFASを用いて本人の母乳育児に対するとらえ方や価値観をふまえるだけでなく,就業状況,経産婦ではそれに加え過去の授乳経験を理解したうえで,助産師による個別的な支援が必要である。

  • 岡津 愛子, 江坂 まや, 大久保 有紀子, 佐々木 美幸, 山田 静江, 片岡 弥恵子
    2021 年 35 巻 2 号 p. 133-144
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    [早期公開] 公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    研究の目的

    宿泊型産後ケア施設を利用した母親の特性,利用状況,利用動機を明らかにする。また,利用動機に影響を及ぼす利用者が困難と感じた場面を明らかにする。

    対象と方法

    東京都23区26市5町8村における宿泊型産後ケア施設のうち,研究協力に同意が得られた施設の利用者を対象に,利用者の背景を調査し,産後に困難と感じた場面について自由記述で回答を得た。分析は,統計ソフトを使用し単純集計を行い,自由記述に関しては内容分析を行った。

    結 果

    各施設において1か月間調査し111部の回答が得た。利用者の年齢は,35~39歳の割合が最も多く39人(35.1%)で,利用者の多くは高齢出産であることが窺えた。利用開始時期は,産後1週間未満が39人(35.1%)と最も多かった。宿泊型産後ケア施設を利用した産後の母親は,【頻回な授乳と児の泣きにより眠れないとき】が辛く,【産後の身体的痛みや苦痛がある中で育児をしなければならないとき】に困難を感じていた。また,【思い通りに母乳育児ができないとき】や【児の成長・発達・体調に対する判断が分からないとき】に難しさ感じ,【イメージに反した育児に自己判断と対応ができないとき】や【漠然とした不安と孤独に適応できないとき】があった。【家族役割変化により家族とのやりとりがうまくいかないとき】や【他者との比較から自己嫌悪に陥ったとき】があり,【仕事復帰や金銭面に不安を感じたとき】があった。

    結 論

    宿泊型産後ケア施設を利用した母親は,高齢出産や分娩のハイリスク化,無痛分娩増加を背景に,産後の身体回復や母親の体調と児の個性にあった授乳に困難を感じていた。

  • 清水 嘉子
    2021 年 35 巻 2 号 p. 145-154
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    [早期公開] 公開日: 2021/09/17
    ジャーナル フリー

    目 的

    育児期にある夫婦関係の自覚と実際的なかかわりの協働やその調整である夫婦ペアレンティングへの思いを明らかにすることを目的に7組のカップル14名を対象として取り組んだ。

    研究方法

    家庭訪問による半構造化面接を夫婦別々に行い,夫と妻の語りを質的に分析し,コードから,サブカテゴリー,カテゴリーを抽出した。

    結 果

    対象とした夫婦は,A県に在住しており,妻は平均38.9歳,夫は41.1歳であり,結婚して平均8.7年が経過していた。妻は,<子育ての中で感じる気持ちを大切にできる><成長している夫を感じる>などから【自分の子育てを支えているものがある】,<子どもとのかかわりは間違っていない><自分のおかれた環境を自覚している>から【子どもへのかかわりへの思い】をもって<夫へのささやかな不満がある><夫とのコミュニケーションへの意識がある>から【夫に対する客観的な分析】をしながら,<夫とうまくいっている実感がある><夫への感謝の気持ちがある><夫への理解と信頼がある>により【夫との協力関係への満足感】をもっていた。一方,夫は<夫婦の協力に対するスタンスがある><子どもに向き合っている>により【自分なりの妻や子どもへの考えがある】をもち,<妻との折り合いをつけている><妻と助け合うことはあたりまえ>などから【妻と助け合って子育てをするための努力】をしながら<妻への信頼と感謝がある><妻との関係に満足している>により【妻との協力関係への満足感】をもっていた。

    結 論

    夫婦は互いの信頼関係や感謝の心,支え合いの中で,二人の関係への満足感をもっていた。妻を支えたいという夫の思いと,子どものために,妻に支えられている実感の中で,二人の関係は保たれ調整されていた。こうした夫婦関係を基盤にして,良好な夫婦ペアレンティングへの思いが保たれていた。

  • 佐々木 美果, 小林 康江
    2021 年 35 巻 2 号 p. 155-165
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    [早期公開] 公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は,シングルマザーに対する妊娠期の助産実践を明らかにすることを目的とした。

    対象と方法

    研究デザインは質的記述的研究である。A県内の産科医療機関に勤務する,助産師としての経験が4年目以上の助産師5名を対象に,シングルマザーの支援に関する視点や保健師との連携に焦点をあて半構成的インタビューを実施した。継続比較分析を行いサブカテゴリー,カテゴリーと抽象化し,シングルマザーに対する妊娠期の助産実践を示すコアカテゴリーを生成した。

    結 果

    シングルマザーに対する助産実践の内容は,【シングルマザーとなり児を育てていくことができるかを見極める】【シングルマザーとして出産する決意をした妊婦に寄り添いながら育児に向けて支援していく】【継続した関わりから母親になろうとしていく変化をアセスメントする】【シングルマザーとなり育児をしていくことを見すえ保健師と連携する】の4カテゴリーとなり,コアカテゴリーとして,『妊娠期から育児を見越し母子の安全を守る』が抽出された。

    助産師は,【シングルマザーとなり児を育てていくことができるかを見極める】ことをスタートとし,育児が可能だと判断した後は,【シングルマザーとして出産する決意をした妊婦に寄り添いながら育児に向けて支援していく】ことや,【継続した関わりから母親になろうとしていく変化をアセスメントする】ことを並行して実践していた。そしてシングルマザーに関わりながら,【シングルマザーとなり育児をしていくことを見据え保健師と連携する】ことを行っていた。

    結 論

    助産師は,シングルマザーの背景や妊娠に対する覚悟を把握したうえで寄り添い,継続的に支援を行う過程で母親になろうとしていく変化をアセスメントしていた。さらに自らが核となり保健師とシングルマザーをつなぎ,産後をみすえ連携しながら支援を実践していた。

  • 中島 久美子, 早川 有子, 臼井 淳美
    2021 年 35 巻 2 号 p. 166-177
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    [早期公開] 公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    産後1カ月及び3カ月の高年初産婦の心身の健康状態と妻が満足と感じる夫の関わりに対する夫婦の認識を明らかにする。

    方 法

    研究デザインは質的記述的研究である。高年初産婦の夫婦8組を対象に産後1カ月と3カ月の高年初産婦の心身の健康状態と,妻が満足と感じる夫の関わりに対する夫婦の認識について,調査票と半構造化面接により収集したデータを質的帰納的に分析した。

    結 果

    1. 高年初産婦の心身の健康状態は,産後1カ月は【妊娠・出産の影響に伴う身体的・精神的回復の遅れ】や【不慣れな育児や児の生活リズムに合わせることへの身体的・精神的負担感】,産後3カ月は【高年齢に伴う慢性的睡眠不足と疲労感】を抱く一方,【母児に適した母乳育児と生活リズムの安定】や【高年齢ゆえの精神的な心の余裕】が生じていた。

    2. 妻が満足と感じる夫の関わりは,夫婦共通の認識と異なる認識があり,産後1カ月は【不慣れで不規則な育児に伴う妻の心身への気づかい】【試行錯誤による夫婦の家庭内役割の協同】【育児を通して育まれる夫の父親としての態度】,産後3カ月は【生活リズムの安定と精神的な余裕を踏まえた妻の心身への気づかい】【安定した夫婦の家庭内役割の協同】【育児を通して充実する夫の父親としての態度】であった。

    結 論

    高年初産婦は,産後1カ月は心身の回復の遅れや育児の負担感,産後3カ月は慢性的な睡眠不足や疲労感を感じる一方,育児と生活リズムの安定と高年齢ゆえの精神的な余裕を認識していた。妻が満足と感じる夫の関わりは,妻の心身への気づかい,夫婦の家庭内役割の協同,夫の父親としての態度であった。特に,妻の心身への気づかいは夫婦で異なる認識が認められ,夫婦の認識の一致が得られ難いといえる。妻の心身の健康状態を安定に保つには,夫婦の良好なコミュニケーションと意識の共有を図り,妻が満足と感じる夫の関わりを高めることが重要である。

  • 上原 明子, 中田 覚子, 竹内 良美, 湯本 敦子
    2021 年 35 巻 2 号 p. 178-186
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    [早期公開] 公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    助産師による分娩開始の診断の実態を明らかにする。

    対象と方法

    助産師467名を対象に横断研究を実施した。分娩開始時刻(第101回助産師国家試験午後問題25を改変)の回答別に助産師の背景(助産師経験年数,分娩介助経験件数)をKruskal-Wallis testにて分析し,分娩開始時刻の判断根拠(自由記載)を分類した。

    結 果

    251名より回収し,203名を分析対象とした。対象者の背景として,192名(94.6%)が医療施設で就労し,助産師経験年数(mean±SD)は12.1±9.2年,分娩介助経験件数は394.1±679.0件であった。分娩開始時刻の回答は,「4時」3名(1.5%),「8時」42名(20.7%),「9時」123名(60.6%),「11時」4名(2.0%),「提示情報では判断できない」31名(15.3%),回答別に助産師の背景の違いはなかった。分娩開始時刻の回答別にみた判断根拠の分類では,分娩開始の定義に加えて,産婦の表情や姿勢など回答時刻別に異なった。

    結 論

    助産師によって分娩開始の診断は異なり,着目する情報やその解釈など,実践知による違いが示唆された。

  • 風間 仁美, 安達 久美子
    2021 年 35 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    [早期公開] 公開日: 2021/10/05
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は,新型コロナウィルスPCRスクリーニング検査を受けた妊婦がこの検査を受けたことで抱いた思いや気持ちを明らかにすることを目的とした。

    対象と方法

    研究対象者は,PCRスクリーニング検査を受けた妊婦のうち,結果が陰性だった120名とした。データはWEBフォームまたは質問紙への直接記入により回収した。調査内容は,PCRスクリーニング検査を受けると知った時の気持ち,検査の説明を聞いた時の思い,検査説明を聞く前後での検査に対する気持ちの変化,検査を受けるまでの気持ち,検査を受けてから結果が出るまでの気持ち,結果が出た後の気持ち,検査結果が陽性だった場合に分娩方法が変更になることに対する気持ち,PCRスクリーニング検査の実施が分娩施設選択の要因になるか否かについてである。選択肢での回答は集計し,自由記載内容は,記載されたそれぞれの文章の中から,類似した言葉を抽出し,言葉毎の記載人数をカウントした。

    結 果

    質問紙の配布数は120,有効回答数は92であった。対象者92名の年齢は,10代が1名,20代が21名,30代が63名,40代以上が7名であった。初産婦49名,経産婦43名であった。

    妊婦は,PCRスクリーニング検査を受けるまでの期間,「不安」「緊張」といったネガティブな感情を持っていた。そして,PCRの検査結果がでるまでの間,妊婦は陽性でないことを願う気持ちを抱えていた。結果が出た後は,「安心した」「ほっとした」というように安堵していた。加えて,更なる感染予防へ注意を払うことを感じていた。

    結 論

    多くの妊婦はPCR検査を希望し,説明に対しても納得しており,PCR検査を肯定的に受け止めていることがわかった。その一方で,検査結果が判明するまでの期間は心理的に落ち着かない状況にあり,結果が判明することによって安堵感を得ていた。

  • 松井 弘美, 工藤 里香, 村田 美代子, 小林 絵里子, 岡田 麻代
    2021 年 35 巻 2 号 p. 196-208
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目 的

    助産師が実践するいのちの教育における児童生徒の学びの内容を明らかにする。

    対象と方法

    X県においていのちの教育の運営を行っている教育行政機関および保健行政機関が保有している既に匿名化された助産師のいのちの教育後の児童生徒の感想文をデータとした。教育行政機関は小学生・中学生,保健行政機関は中学生のデータであった。分析はテキストマイニング技法を活用した。2機関の運営するいのちの教育の内容が異なっていたことより,機関別にデータの分析を行った。テキスト型データを処理し構成要素群を抽出した。構成要素のうち頻度5以上を対象にクラスター分析を行った。クラスターの構成要素からサンプル検索により,クラスターの意味を研究者間で検討した。教育内容を質的変数とし,クラスターと同時に布置し学びの特徴を分析した。

    結 果

    小学生の学びは,【赤ちゃんに触れて色々感じた】【愛情を受けて育った自分に気づく】【母親のお腹にいた自分を感じた】など7つのクラスターが抽出された。中学生の学びは,A教育行政機関では【自分の将来を考える】【赤ちゃんのアンビバレンスを感じる】【周囲の愛情を実感する】など6つのクラスター,B保健行政機関では【自分の将来を考える】【命の大切さに気づく】【愛情を受けて育った自分に気づく】など6つのクラスターがそれぞれ抽出された。教育内容とクラスタ―の布置図より,小学生においては乳児と触れ合う体験が最も学びに結びついていた。

    結 論

    助産師が実践するいのちの教育からの小学生の学びは,自分の命の大切さの実感が中心であった。中学生の学びは,自分のみならず他者を含めた命の大切さの実感と,自分の将来への思考が中心となっていた。

  • 中田(中込) かおり
    2021 年 35 巻 2 号 p. 209-219
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    目 的

    出産後に仕事へ復帰する母親を対象とした母乳育児継続プログラムが研究者により開発された。本研究では,母乳育児継続プログラムで使用したパンフレットの作成過程と評価を記述することを目的とした。

    対象と方法

    パンフレットの目的は,第一に出産後1年以内に仕事へ復帰する母親を対象とし母乳育児を継続する上で役立つ知識や情報を提供することであり,第二に仕事復帰後の母乳育児を促進することであった。主な内容は,母乳育児継続のメリット,母乳育児と仕事の両立の実際,搾乳と服薬,卒乳であった。経験者の体験や工夫を盛り込み,復帰後の1日のサイクルやポイントをわかりやすく示したことが特徴であった。対象者は先行研究の3群のうち,プログラム群(48名)とパンフレット群(46名)の参加者であり,出産後4~12か月の間に仕事復帰予定の母乳育児中の母親であった。パンフレット群はパンフレットを郵送で提供し,プログラム群は同じものを母乳育児クラスでテキストとして使用した。評価項目は理解度,期待一致度,活用度,満足度であり,5段階評価とした。上位2つを高評価,下位3つを低評価とし群間でχ2検定を行った。パンフレット群では,評価の高低と仕事復帰後3か月時の母乳継続割合のχ2検定を行った。データ収集期間は2017年2月~2018年8月で,研究者が所属する機関の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。

    結 果

    パンフレット理解度の評価は両群とも90.0%以上であった。期待一致度,活用度,満足度は,パンフレット群はプログラム群より有意に低かった。パンフレット群で期待一致度,活用度,満足度が高い人は,仕事復帰後3か月時の母乳育児割合が高かった。

    結 論

    パンフレットの理解度は高く,知識・情報を提供するツールとしての評価は得られたと考えた。パンフレットの内容を改善することにより,母乳育児継続に貢献できる可能性が示唆された。

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