日本助産学会誌
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原著
死産や新生児死亡で子どもを亡くした母親の次子妊娠における体験
谷崎 望田淵 紀子
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2023 年 37 巻 1 号 p. 27-38

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抄録

目 的

死産や新生児死亡で子どもを亡くした母親の悲嘆から回復していく力に着目し,次子妊娠における体験を明らかにする。

対象と方法

死産や新生児死亡ののち,次子を妊娠し正期産で出産した母親に,非構成的面接を実施し,Giorgiの記述的現象学的アプローチを用いて分析した。

結 果

研究参加者は,妊娠16~37週で死産や新生児死亡を体験したのちの妊娠で初めて生児を得た母親6名であった。死産や新生児死亡で子どもを亡くした母親は,次子の妊娠において子どもの死が起こった自分自身に【母親としての身体への疑いと自己否定】を拭えず,【再妊娠により蘇る死産のトラウマ】からくる不安や恐怖を幾度となく体験した。また,母親のなかで前回の妊娠への後悔から【ありのままのいのちの受け入れ】への思いや【亡くなった子のいのちとの繋がり】を見出し,さらに,前回の週数を越え,身をもって【週数を重ねることで確かめられる安心】を感じていた。これらの体験が相互に影響しながら妊娠が経過するなかで,不安や恐怖を持ちながらも一層【ありのままのいのちの受け入れ】への意思を強めていた。そして,子どもを亡くした悲しみや苦悩を共有され難いことを痛感しながら,本当に寄り添ってくれる【亡くなった子の存在を共有することができる人の支え】に救われる体験をしていた。

結 論

死産や新生児死亡で子どもを亡くした母親の次子妊娠における体験として6つのテーマが導き出された。母親は,大切な子どもを亡くした体験から生命の奇跡や尊さを理解し,【ありのままのいのちの受け入れ】という母親としての生き方を見出して,次子妊娠を通して亡くなった子とともに歩み続けていたと考えられる。看護者には,母親がトラウマを抱えながらも,亡くなった子と次子の母親として成長していく過程に寄り添う姿勢が求められる。

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