日本助産学会誌
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日本で暮らすムスリム外国人女性に対する助産ケアの特徴
五味 麻美大田 えりか
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2024 年 38 巻 1 号 p. 92-102

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抄録

目 的

日本に在住するムスリム外国人女性(以下,ムスリム女性)に対する助産ケアの特徴を明らかにすることである。

対象と方法

国内の産科外来および病棟でムスリム女性に対する助産ケアを担当した経験を有する助産師5名を研究対象者として,質的記述的研究を行った。インタビューガイドを用いた半構造化面接によってデータを収集し,質的帰納的に分析した。

結 果

分析の結果,ムスリム女性に対する助産ケアの特徴として34サブカテゴリー,14カテゴリーと3つのコアカテゴリーが抽出された。ムスリム女性に対してケアを行う助産師は,通常外国人を担当する際に着目する出身国や言語的コミュニケーションレベルといった対象者の背景よりも宗教的な背景に着目し,ケア対象者が【ムスリムであることを意識した関わり】を行っていた。そして,早い段階から本人や家族,医療スタッフとの間で【宗教的配慮に関するインフォームド・コンセントと情報共有】を行いながら専門職としての【看護観に基づき手探りで宗教的配慮を実践】していた。

結 論

ムスリム女性に対する助産ケアの特徴として,宗教的配慮が大きく影響していることが明らかになった。助産師はムスリム女性や家族に対して早い段階から宗教的配慮に関するインフォームド・コンセントを行い,自らの看護観に基づき手探りで宗教的配慮を実践していた。しかし,宗教はセンシティブな事柄であることから,助産師はムスリム女性たちのニーズや価値観の多様性や個別性を認識しながらも個別的なニーズに踏み込むことを躊躇し,その結果として画一的な配慮に留まる傾向がみられた。ムスリム女性に対する助産ケア向上のためには対象者一人ひとりの多様なニーズを考慮し,より文化的に適切なケアに繋げることの必要性が示された。

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