2024 年 38 巻 1 号 p. 36-47
目 的
COVID-19の感染拡大による家族との面会制限中にMFICUに緊急入院となった危機における妊婦の心理を明らかにする。
方 法
研究デザインは質的記述的研究とした。研究協力者は,面会制限中にMFICUに緊急入院した後,産科一般病棟に転棟して転棟後1カ月以内の入院中の妊婦4名であった。データ収集は,半構造化面接法を用いて実施した。
結 果
妊婦の心理をアギュララの問題解決型危機モデルに沿って分析した結果,8のカテゴリーに集約できた。妊婦は,【コロナ禍でも妊娠したことを喜ぶ】中で,集中治療室を連想する【MFICUに緊急入院となり重症感を抱く】不均衡状態に陥っていた。また【家族と会って児の成長を共有したいと感じる】均衡の回復への切実なニードを常に抱いていた。しかし徐々に,【児を守るために必要な入院だと捉える】現実的な知覚に至っていた。さらに【面会制限中も入院前の家族関係を保つ】ことができ,【家族以外との交流を入院生活の励みとする】社会的サポートを得ていた。そして【家族と面会したい気持ちに折り合いをつける】適切な対処機制をとり,【特殊な療養環境に柔軟に適応する】均衡回復状態に至った。
結 論
COVID-19の感染拡大による家族との面会制限中にMFICUに緊急入院となった妊婦は,面会制限中も実際に家族と児の成長を共有したいという思いを常に抱きながらも,児を守るために必要な入院であったと前向きに捉えていた。また,妊婦はICTを活用してタイムリーに家族と妊娠経過や児の成長を分かち合い,自分の気持ちに折り合いをつけて特殊な療養環境に柔軟に適応して入院生活を送っていた。