日本助産学会誌
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原著
病院における会陰裂傷予防に関する分娩期の助産ケア
牛木 沙保竹内 翔子篠原 枝里子飯田 真理子中村 幸代
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2024 年 38 巻 1 号 p. 59-69

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抄録

目 的

病院に勤務する助産師を対象に会陰裂傷予防に関する分娩期における助産ケアの実態および分娩介助経験数による違いを明らかにすること。

対象と方法

首都圏の分娩を取り扱う病院の産科病棟に勤務し分娩介助経験のある助産師202名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。主な質問内容は会陰裂傷予防に関する分娩期における情報収集内容や支援内容の実践頻度についてであった。分析では,記述統計の算出および分娩介助経験数における比較では中央値を基に200件で2水準に分類しMann-WhitneyのU検定を行った。本研究は横浜市立大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号F221000005)。

結 果

有効回答が得られた100名を分析対象とした(回収率50.5%,有効回答率98.0%)。情報収集の実践頻度が高かった項目は「初産か経産か」,「児の推定体重」であり,90%以上の助産師が「いつもしている」または「時々している」と回答した。支援内容では「いつもしている」の回答が最も多かった項目は「会陰保護」で88.0%である一方,実践頻度が低かった支援内容は「会陰の温罨法」,「分娩第1期での入浴」などであった。さらに分娩介助経験数における比較では,分娩介助経験数が200件以上の助産師は200件未満の助産師よりも有意に会陰切開・裂傷既往の有無など会陰の伸展の阻害要因を情報収集し,「過度な努責がかからないような声かけ」,「会陰を触りすぎない」など自然な会陰の伸展を妨げないような支援を実践していた。

結 論

本研究から,経験がより豊富な助産師は分娩介助の経験を活かした支援を実践していると考えられ,助産師全体の助産ケア実践力向上のためには経験の豊富な助産師のアセスメントや支援内容を共有する機会を設けることの必要性が示唆された。

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