日本助産学会誌
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原著
妊娠葛藤状態にある人々への相談支援の実態調査―相談支援の課題と助産師の関与―
日本助産学会SRHR & Abortion Care ワーキンググループ システムグループ五十嵐 ゆかり岡 美雪園田 希坂本 希世長田 雅子
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2024 年 38 巻 2 号 p. 238-249

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抄録

目 的

本研究の目的は,妊娠葛藤状態にある相談者が最初にアクセスする相談窓口(にんしんSOS)における相談活動の実態および助産師の関与の現状と課題を明らかにすることである。

対象と方法

全国のにんしんSOSの相談窓口をもつ53施設を対象施設とし,各施設代表者1名,相談員最大5名の合計最大318名に無記名Webあるいは質問紙による調査を行った。調査内容として代表者には,事業形態,相談員の人数,団体の課題などの14項目,相談員には,葛藤や困難,助産師に期待することなどの29項目とした。量的データは記述統計量を算出し,質的データは意味内容ごとにコード化し,抽象度を上げカテゴリーへとまとめた。

結 果

代表者33名(62.0%),相談員84名(32.0%)から回答を得た。代表者は50代(36.4%)が最も多く,職種は助産師(39.4%)が最も多かった。団体の活動における課題は,財政面は【安定した財源確保が困難】,人材面は【相談員の資質担保が困難】,【人員不足】など,その他として【支援が途切れる】,【活動周知の難しさ】が得られた。相談員は,年齢の平均は52歳,にんしんSOSでの活動経験は平均3.9年であった。相談員の葛藤や困難は【他機関との連携体制構築における課題】【効果的な支援活動継続の障壁】などが得られ,助産師や産科医療機関へ協力を求めたいことは【密で柔軟な連携体制の確立と拡充】【相談者を理解したかかわりと柔軟な対応】などが得られた。

結 論

にんしんSOSの活動継続には財源確保や相談者の人的資源の不足,各相談機関との連携の不透明さなどの課題があった。相談員は,多様な背景をもつ相談者の支援が多岐にわたること,相談者の課題を解決する連携体制の構築の困難さ,効果的な支援提供の障壁,相談対応を評価することの困難さと,相談対応の心理的負担などを抱えていた。また,助産師や産科医療機関に対し,連携や相談者への対応の見直し,相談活動への参加,性教育の推進を求めていた。

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