2024 年 38 巻 2 号 p. 227-237
目 的
母子保健業務に携わる保健師,助産師,看護師の視点から,2012年改正版の母子健康手帳(以下,母子手帳)の活用における利点や課題,2023年の様式改正に対する要望を明らかにすることである。
対象と方法
研究対象者は,母子保健業務で母子手帳を活用している保健師,助産師,看護師とし,機縁法でリクルートした。「病院」,「地域」,「自治体」の職域ごとに,2-5名でフォーカスグループインタビューを実施し,質的記述的に分析した。
結 果
研究参加者は,保健師が5名,助産師が5名,看護師が1名の合計11名であり,母子保健業務の経験年数は平均11±6.8年であった。各グループの参加者については,「病院」グループは助産師4名,「地域」グループは助産師1名と看護師1名,「自治体」グループは保健師5名で構成された。フォーカスグループインタビューの内容を質的記述的に分析した結果,《母子手帳の活用における利点》と《母子手帳の様式改正に対する要望》の2つの大カテゴリーに分類された。母子手帳の構成と各ページにおける活用上の課題については,内容をページごとに分類し表を作成した。《母子手帳の活用における利点》と《母子手帳の様式改正に対する要望》については,〈情報収集のしやすさ〉,〈出産後も継続できる記録〉,〈効果的な指導ツール〉,〈電子化とのハイブリッド〉,〈情報を効果的に届けるための工夫〉,〈継続して使用するための連携〉,〈ユニバーサルに使える手帳〉の7つのカテゴリーと21個のサブカテゴリーが抽出された。
結 論
母子保健業務において,母子手帳の情報の集約性と継続性が評価されていた。自治体で勤務する保健師からは,母子手帳を用いた継続ケアの実現のために,学校との連携が望まれていた。養育者の多様性や子どもの個別性への対応,母親と父親の子育ての共同化につながる仕組み作り等,母子手帳が社会の変化に対応していくことが期待されていた。