2024 年 38 巻 2 号 p. 294-303
目 的
本研究は,日本の助産所の存続・発展のため,助産所が増加しているA県の助産所の運営上の特徴を明らかにすることを目的に行った。
対象と方法
A県の助産所の開設者もしくは代表者である助産師6名を対象に,助産所運営の現状と課題について半構造化面接にて聴き取った。インタビュー協力者の語りから,A県の助産所の特徴を見出し,わが国で今後助産所が存続・発展していくための解決策を論議した。
結 果
A県の助産所の特徴は,地域によって「運営形態が多様」なことであった。まず,A県には公設の助産所がある。そして,個人経営の助産所には,複数の助産師で多くの分娩を扱う助産所と,一人で開業している助産所が複数で協力し合って地域の分娩を扱うという二つのパターンがある。多様な運営形態で開設された背景に,出産施設の集約化が影響している地域,さらに,集約化に伴い女性たちが産み場所の確保のために声を挙げていた地域がみられた。助産所の「嘱託医・嘱託医療機関との契約は概ね良好」で,契約が困難な地域は限られていた。一つの地域では助産師会が嘱託医療機関と契約していた。助産所の存続・発展に向けた課題には,開業助産師の育成や財政面の問題があることも明らかとなった。
結 語
今後,助産所が存続・発展していくためには,母親のニーズを捉え,助産師同士が協力し合い,医療機関・行政と共にその地域の周産期医療体制に応じた助産所をつくり上げていくことが求められる。