日本助産学会誌
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母子健康手帳における妊婦自身の記録欄の未記入要因の検討
林 薫石村 美由紀
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2024 年 38 巻 2 号 p. 284-293

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抄録

目 的

2012年の母子健康手帳の改正により拡充された妊婦自身の記録欄において,妊婦が妊娠期に記入しなかった背景やその理由を明らかにし,妊婦自身の記録欄の未記入要因を検討することとした。

対象と方法

分娩を取り扱わないA助産院に来院した母親で,母子健康手帳の妊婦自身の記録欄に半分以上の未記入箇所がある産後3~4か月までの母親3名とした。研究参加者には,研究依頼文を用いて研究の説明を行い,書面同意を得た。倫理的配慮に基づき,インタビューガイドに沿って妊婦自身の記録欄への未記入要因について,語っていただいた。時間は1人30分程度で,内容はICレコーダーに録音し,質的記述的に分析した。倫理的配慮として福岡県立大学研究倫理部会の承認を得て,これを遵守し実施した。

結 果

分析の結果,妊婦自身の記録欄の未記入要因として,【母子保健従事者の介入不足】,【母子健康手帳の内容の認識不足】,【就労による忙しさ】,【特筆することがない順調な妊娠経過】,【伝承を見据えた記録内容の取捨選択】,【母子健康手帳以外のツールの活用】が抽出された。

結 論

母子健康手帳の妊婦自身の記録欄における未記入要因の検討を目的に,母親への半構造化面接を行い,分析した結果6つの未記入要因が抽出された。母子健康手帳の交付時や,妊婦健診での医療従事者の介入の重要性と,記録欄を参照するときの個人情報を重視した配慮が必要であることが示唆された。活用率が向上した場合,その記載内容から,ハイリスク妊婦の早期発見・早期介入に活用できると考える。しかし,妊婦自身の記録欄に記載があっても,十分な情報ではないと捉え,妊婦が助産師へ相談しやすい環境づくりの必要性が示唆された。また我が国では,多様なニーズに対応できる母子健康手帳が求められていることから,母子健康手帳の内容やあり方について,助産師や保健師等の多職種連携により検討する必要性が示唆された。

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