目 的
妊娠末期の胎児への愛着の程度と食生活行動,栄養素摂取量,妊娠経過・分娩転帰との関連を明らかにする。
対象と方法
妊婦初期から産後1か月健診までの健診を定期的に受診した163名の二次解析である。調査内容は,妊婦属性,妊婦健康診査記録・分娩記録,Prenatal Attachment Inventory日本語(PAI),簡易型自記式食事歴法質問票,食生活や健康状態自覚である。解析には,PAI得点を3群均等割付し,愛着「低群」「中群」「高群」を作成した。記述統計,一元配置分散分析後,年齢・分娩歴・非妊時BMIを共変量とした共分散分析,多項式の対比によりPAI 3群間の線形傾向を検定した。
結 果
解析対象者は123名(有効回答率77.4%),平均調査妊娠週数は32.2±2.0週であった。初産婦は43名(35.0%),末期PAI平均は60.6±11.9点であった。「健康状態が良好」と認識している者の割合は,低群37名(86.0%),中群39名(92.9%),高群38名(100.0%),愛着が高い母親ほど健康である自覚を有する傾向を示した(P=0.06)。共変量を調整後の推定周辺平均エネルギー摂取量は,低群1472.9±51.3 kcal,中群1505.3±51.7 kcal,高群1443.1±54.2 kcalであり,日本人推奨食事摂取基準を満たす群はなかった。推定周辺平均出生体重は,低群3013.0±48.8 g,中群3105.7±49.2 g,高群2940.3±51.5 gであり,愛着の程度3群と出生体重の間に逆U字型の関連を認めた(P=0.04)。
結 論
妊婦は,愛着が高くなるほど自分の健康状態が良好である自覚を有する傾向があるが,推奨食事摂取基準を満たしていなかった。助産師は,愛着が高いと思われる妊婦に対しても,栄養素摂取状況は不健康である矛盾が存在することを念頭に,保健指導に関わる必要がある。