日本助産学会誌
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原著
分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるための臨床指導者の教育の実践
永井 紅音荒木 奈緒
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2025 年 39 巻 1 号 p. 102-111

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抄録

目 的

分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるための臨床指導者の教育の実践を明らかにすることである。

方 法

クリニカルラダーⅢレベルの認証を受けた分娩介助実習指導経験のある臨床指導者に半構造的面接を行い,KJ法を用いて分析した。

結 果

分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるための臨床指導者の教育の実践は,8個に集約された。分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるため,臨床指導者は教員や助産師学生から【学生が実施できる産婦のケアを判断するため学生について情報を得る】を行い,【学生が産婦のケアをするためにケア実施前からケア実施後まで必要な判断を継続的に行う】を行っていた。この判断を元に【達成可能な行動目標を学生が設定できるよう導く】,【学生が産婦のケアを実施する前にまず臨床指導者がケアを実施して見せる】,【可能な限り学生に産婦のケアを実施させる】,【学生がケアを実施してできたことを明らかにし気づかせるため「振り返り」を行う】を行っていた。これらの教育の実践は円環的構造となり,【学生が産婦のケアをするためにケア実施前からケア実施後まで必要な判断を継続的に行う】とそれぞれフィードバックしていた。その一方,助産師学生が実際に産婦のケアを経験し学ぶため,【産婦との関係性を構築する】を行っていた。さらに,【学生を一人の人間として認め,学生にとって助産師を目指して良かったと思える実習となるよう関わる】という臨床指導者の信念が分娩介助実習における助産師学生の自己効力感を高めるための教育の実践全体に影響を与えていた。

結 論

臨床指導者は学生の自己効力感を高めるため,後輩助産師育成への信念を持ち,刻々と変化する分娩経過の中で必要な判断を継続的かつ瞬時に行いながら,学生が実施可能な産婦のケアを見極め,可能な限り学生に実施させ,実施できたことを気づかせる教育を実践していた。

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