日本助産学会誌
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原著
自ら助けを求めないDV被害女性を支援するための助産師の実践
問本 弘美大川 聡子三木 明子
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2025 年 39 巻 1 号 p. 112-125

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抄録

目 的

夫・パートナーと同居するDV被害女性から自発的な相談がない,もしくは支援に対する本人のニーズが高くない状況における,自ら助けを求めないDV被害女性を支援するための助産師の実践を明らかにする。

対象と方法

研究参加者は,周産期のDV被害者支援を研究している医療施設の助産師,もしくは,DVに関し組織的な取り組みを行っている医療施設で働き,DVの視点を持った実践を行う助産師とした。方法は質的記述的研究デザインを用い,オンラインにて半構成的面接を実施した。得られたデータをコード化しカテゴリーを作成した。神戸女子大学及び神戸常盤大学の倫理委員会の承認を得て実施した。

結 果

研究参加者は,3つの医療施設に勤務する助産師7名であった。自ら助けを求めない周産期のDV被害女性とその家族の特徴は,【対応すべき問題としてDVに向き合えない】【家庭のバランスを壊すような介入は拒否する】【閉鎖的な家庭内で子どもが危険にさらされている】の3カテゴリーであった。自ら助けを求めないDV被害女性を支援するための助産師の実践として,以下の6カテゴリーを抽出した。助産師は,女性からの自発的な相談がなくとも【気になるサインをもとに情報を積み重ねる】ようにし,【マタニティケアを通し何度も踏み込んで話を聞く】ことで夫婦関係について把握し,【DVを自覚しSOSを出す女性の力を高める】と共に,【夫婦が安全に育児できるか判断する】ようにしていた。そして,【ケアのバトンを地域へ確実につなぐ】ことに加え,【退院後もつながり続ける院内の体制をつくる】ようにしていた。

結 論

夫との同居継続は子ども虐待のリスクが高い状況であるにも関わらず,女性自身はDVを問題と捉えず,家庭に介入されることを拒否していた。そのため,夫婦の関係性のアセスメント,DVを自覚し自分からSOSを出せるように促す関わり,そして,確実に支援をつなぎ安全に育児するための,院内の多職種・多部門及び地域の保健師や児童福祉部門との連携が,助産師の実践として重要である。

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