論文ID: JJAM-2018-0049
目 的
早産やSmall for gestational age(SGA),低出生体重のリスク因子の一つに,妊娠中の心理的ストレスがある。近年,就労妊婦が増加する中で,職業性ストレスによる妊娠転帰への影響が注目されている。本レビューは,妊娠中の職業性ストレスと早産・SGA・低出生体重との関連を,定量的統合により明らかにすることを目的とした。
対象と方法
2019年12月までに発表された和文・英文文献を対象に,「早産」「出生体重」「職業性ストレス」などの各データベースに応じた検索語を用いた電子データベース検索(医中誌,CiNii,MEDLINE,CINAHL,Scopus,PsycINFO)およびハンドサーチを行った。包含・除外基準に基づくスクリーニングを行い,レビュー包含論文を選定後,論文の質を評価した。定量的統合には,DerSimonian-Laird法を用いた。
結 果
11論文をレビューに包含した。妊娠中の職業性ストレスにより,9編中2編の論文で早産リスクの増加,6編中2編の論文でSGAリスクの増加,2編中1編の論文で低出生体重リスクの増加が報告されていた。同一尺度で職業性ストレスを測定していた論文の定量的統合の結果,職業性ストレスが最も高い「高job strain群」では,その他の群に比べて,有意に早産とSGAのリスクが高かった[オッズ比(95%信頼区間):早産=1.2(1.0-1.3),SGA=1.2(1.0-1.4)]。職業性ストレスと早産の関連についての研究間の異質性は,サブグループ解析の結果,調査地域の違いにより生じた可能性が示された。
結 論
妊娠中の職業性ストレスが高い場合,早産やSGAのリスクの増加につながる可能性が示唆された。早産・SGAの予防に向け,職業性ストレス軽減のための職場環境や業務内容の調整に関する検討が必要である。