日本助産学会誌
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出生後90分間における母子接触と哺乳行動の関連
古田 紀子横尾 京子
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2001 年 15 巻 1 号 p. 24-33

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抄録

WHO/UNICEFの母乳育児成功のための10か条の第4条「出生後30分以内に母乳育児を開始するよう母親を援助すること」の実施についてはさまざまな解釈があり, 出生後30分以内に無理に吸畷させるなどの状況がある。そこで, 日常の実践現場を背景に, 出生後の母子接触状況と哺乳行動の関連を分析し, 第4条の実践上の課題を明らかにした。
対象は, 22組の母親と新生児で, 出生直後から90分間, 新生児の行動に焦点を合わせ, 母親や看護識者の行動も含めてビデオ撮影した。分析は記述的に行い, 母子接触パターンと哺乳行動のプロセスを抽出し, 両者の関係を探索した。
その結果, 次のことが明らかになった。1) 母子の接触状況は4パターンに分類でき, そのうちの3パターンはWHO/UNICEFの提言に相当した, 2) 全新生児に哺乳前行動・Crawling・Rooting・捕捉・吸畷という4段階の哺乳行動が認められた, 母子接触中断中には, Rootingや手指の吸畷が認められた, 3) 哺乳行動に対する母親と看護職者の主な働きかけは, Crawling・Rooting・捕捉・吸畷の出現に対して,「乳頭を摘み出す」「後頭部を支える」「乳頭を口元へ寄せる」「乳房を支える」などであった。
これらの結果から, 第4条の実践上の課題について以下の点が挙げられた。1) 無理に吸畷させるのではなく, 新生児の段階的な哺乳行動を理解し, 吸畷が行える段階を待つ, 2) 哺乳行動を妨げないよう母子接触のしかたを配慮する, 3) 必要時, 母子への働きかけによって哺乳行動を助ける, 4) ルーチンの処置の実施時期と内容について再検討することである。

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