日本助産学会誌
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分娩期における唾液中の分泌型IgA濃度の変化と産婦のストレス要因に関する研究
下見 千恵
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キーワード: 唾液, s-IgA, 分娩期, ストレス
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2004 年 18 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

目的
本研究の目的は分娩期における唾液中の分泌型IgA (secretory IgA: s-IgA) の動態を明らかにし, 産婦のストレス要因を唾液中のs-IgAを用いて, 家族という人的環境から検討することである。
対象および方法
妊娠経過中合併症がなく正期産である産婦 (経腟分娩) で, 研究協力の了解が得られた18人 (初産婦10人, 経産婦8人) を対象とした。
妊娠末期および分娩期 (陣痛発来で入院した時点およびその後分娩室入室まで2時間おき) に唾液採取を行い, EIAによるキット (MBL製) を用いてs-IgAの定量を行った。また対象の分娩期にかかわった看護者に対し, 分娩期における家族の付き添い状況等を問う質問紙調査を行った。
結果
分娩期における唾液中s-IgA濃度は, 個人差が大きかった。また, 分娩期における唾液中s-IgA濃度は, 分娩前16時間値より分娩前6時間値が有意に高値であった。加えて, 妊娠末期の唾液中s-IgA濃度と比較して, 同様に分娩前6時間値が高かった。
家族の付き添い時間と分娩前2時間の産婦の唾液中s-IgA濃度は正の相関を認めた。
結論
分娩期は陣痛や産痛という強い痛みに持続的にさらされ, 産婦のストレスは高くs-IgA濃度は低いことが予測された。しかし, 分娩期における唾液中s-IgA濃度は分娩進行に伴い上昇傾向にあることがわかった。また, 家族の付き添い状況が産婦のストレスに関連している一要因であることが考察された。

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