抄録
出産は, 喜びとともにさまざまな苦痛を伴う体験である。人はその人独自の知覚によって出会った出来事をとらえ, 判断し行動する。そのことは, その人の新しい知覚のしかたの学習として記憶され, その後の行動に影響していく。過去に出産の経験をもつ経産婦では, 今回の出産体験に過去の出産がどのような影響をもたらしているのであろうか。27名の経産婦の出産体験を半統制型面接法によって聴取し, その内容を, (1) 自己制御, (2) 身体機能制御, (3) 出産機能, (4) 陣痛その他の身体的苦痛, (5) サポート, (6) 児に対する期待, (7) 先入観の7項目に分類して分析を行った。経産婦は過去の経験と異なる事象や, 過去の否定的体験と同じ状況に立ち至る場合に, 恐怖や不安を感じたり, また, 過去の失敗を改善する試みを行ったりして, 過去との関連で出産を行っていることがわかった。