1998 年 73 巻 1 号 p. 48-50
富士吉田市のクレソン水田ではほぼ半数の田にイケノミズハコベが発生しており,増殖が旺盛で,植え付けたクレソンの隙間に侵入して生育を阻害し,収穫の際に混入して問題になっている.クレソン栽培では通常年間を通して10~15cmの水深で,湧水を掛け流す.この条件下で,イケノミズハコベ以外には,セリ,コカナダモ,エビモ,バイカモ,カワヂシャなどの水生植物が発生しており,また,コウキクサや東海地方で知られていた帰化種のイボウキクサ(Lemna gibba: 長田1976)も多く発生していた.すなわち,年間を通して水温の低い流水が保たれる条件下で帰化植物を含む特異な植生が成立したものと考えられた.