1998 年 73 巻 2 号 p. 102-115
これまでに得られた観察結果(Tanaka 1997a-e)によると,表題の3属は属のランクで区別するほどの顕著な差異を持たないと判断される.従って,これら3属を1属に統合することを試みた.Ypsilandra 属とHeloniopsis 属はHelonias 属に統合される.検討の結果,Helonias 属には9種が認められた.この内の1種は北米東部に,他の8種はアジア東部に分布している.本稿には,学名の新組合せによる新名が8含まれている.Heloniopsis 属の和名であるショウジョウバカマ属という名称は,3属を統合した場合のHelonias 属の和名としても使えると思う.
日本産のショウジョウバカマ属(Helonias)で,花は白色または少し帯紅紫色,葉はやや薄質で縁がしばしば細かく波状となり,やや黄緑色のものが,関東南部から本州西部,四国,九州に分布している.この種類は今日シロバナショウジョウバカマとツクシショウジョウバカマの2群(あるいはヤマシマショウジョウバカマも区別して3群)に区別されることが多いが,私はこれらを区別せず一種として見なした.これらは明確な差異をもって互いに区別されるというものではない.かっては,九州のものも含めて,上記の分布域に生育する白色系統のものはシロバナショウジョウバカマと呼ばばれていた(牧野 1891,Matsumura 1905,Koidzumi 1930).従って,この種(Helonias breviscapa)の和名としてはシロバナショウジョウバカマがふさわしいと考える.しかし,この和名は,紅紫色の花をつける(普通の)ショウジョウバカマ(H. orientalis)の白色花をつけるものとこれまでしばしば混同されてきた.この混同は和名だけに留まるものではなかった.名称に由来する混乱を避ける意味から,H. breviscapa の和名として新にコチョウショウジョウバカマ(胡蝶猩々袴)の名を与えることにする[この名はThunberg(1784)がかつてScilla japonica(=H. breviscapa)の和名として採録した ‘Kotjo’に因む].ショウジョウバカマの白花品に対してはシロショウジョウバカマ(檜山 1939)の和名がある.ただし,本稿では花色の変異体を分類学的に区別することはしなかった.アジア産8種のうち,日本に分布するのは次の4種である: Helonias leucantha オオシロショウジョウバカマ,H. kawanoi コショウジョウバカマ,H. orientalis ショウジョウバカマ,H. breviscapa コチョウショウジョウバカマ.