植物研究雑誌
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Sinocrassula paoshingensis (S. H. Fu) H. Ohba et al. とSedum indicum (Decne.) Berger var. luteorubrum Praegerについての分類学的考察
大場秀章秋山忍武素功
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2000 年 75 巻 5 号 p. 296-302

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抄録

中国四川省から報告された Sedum paoshingense S.H.Fu についての最初の研究で, Ohba (1992) は Sinocrassula indica (Decne.) Berger の異名とした. 1997年に四川省稲城県, 1999年に雲南省徳欽県でこの植物を見出し, その生育状況及び形態について観察を行った. これらと採集した標本にもとづいて考察した結果, Sedum paoshingense S.H.Fu は, Sinocrassula indica (Decne.) Berger の変異には含まれない固有の特徴をもち, 後者とは別種であることが明らかとなった. 中でも,萼筒部が短く, かつ花弁が長いため花が長楕円体状となること, 花弁は先端のみが外曲し, 子房は背側が膨らまないこと, 根生葉は花時には見られず,茎葉は接触すると脱落しやすい点は, この種を Sinocrassula indica から区別する上でのよい特徴となる.この種について先に雲南大学の庄璇は, 雲南植物誌 8 巻 (1997) で, Praeger が1921年に発表した Sedum indicum var. luteorubrum を独立種と考察し Sinocrassula luteorubra という学名を提唱したが, basionym の出典が明示されておらず, これは有効発表とは認められない. また, 庄璇は,この種が Sedum paoshingense と同種であることには気付かなかった. この種について種のランクで最も早く有効に発表された種名である Sedum paoshingense にもとづいて, Sinocrassula paoshingensis を提唱した.

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© 2000 植物研究雑誌編集委員会
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