植物研究雑誌
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中国雲南省南部のトチバニンジン属1新変種とその18S rRNA遺伝子及びmatK遺伝子の塩基配列
朱妹伏見裕利蔡少青陳虎彪小松かつ子
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2003 年 78 巻 2 号 p. 86-94

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抄録

富山医科薬科大学和漢薬研究所と中国北京大学薬学院天然薬物学系との共同研究で1999年に中国雲南省においてトチバニンジン属植物の学術調査を行った. 雲南省南部の金平で入手した根茎が竹節状を呈するトチバニンジン属植物の一種は, 根茎の形態並びに同属植物の分布から P. japonicus (PJJ) と考えられた. しかし, 遺伝子解析の結果, 核 DNA の18S rRNA 遺伝子及び葉緑体 DNA の matK 遺伝子の塩基配列は PJJ と明らかに異なり, P. vietnamensis (PV) に近かった. これまでの研究により, 両遺伝子の配列はトチバニンジン属植物では種のレベルで安定していることが証明されている. そこで, 入手した植物数個体についてさらに外部形態を検討した. その結果, 小葉は長卵形で, 先端が長さ 2-2.5 cm で尾状に尖り, 上下面の脈に沿って顕著な剛毛があること, 単一の散形花序に70-100個の小花がつき, 花柱は 1 または 2 個, 子房が 1 室または 2 室であることなどの特徴が見られ, PJJ とは異なっていた. 一方, これらの特徴は PV に類似したが, 小花の花盤が平坦で褐色または暗褐色を呈し, 花柱が 2 個ある場合にこれらが基部から完全に分離する点で PV と異なっていた. 褐色または暗褐色を呈する花盤はこれまでに報告されているトチバニンジン属各種に見られない特徴である. 以上の特徴により, 雲南省南部で得られた植物を P. vietnamensis Ha & Grushv. var. fuscidiscus K.Komatsu, S.Zhu & S.Q.Cai と命名, 記載した. さらに, この新変種の染色体数は 2n = 24 であることを確認した.

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© 2003 植物研究雑誌編集委員会
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