2007 年 82 巻 3 号 p. 126-129
Tsusaka et al.(2006)は2倍体アオキの核形態学的解析をおこない,2倍体アオキに性染色体が存在することを報告した.しかし,研究に用いた材料は,分布の北東部にあたる中国・四国地方産のものに限られていた.そこで,2倍体アオキが分布域全域にわたり性染色体を保持しているかどうかを確認するために,九州・沖縄地方産のアオキの核型を解析した.その結果,4番目に長い染色体対に中部動原体染色体を2本もつホモ型と,中部動原体染色体と次中部動原体染色体を1本ずつもつヘテロ型の組み合わせをもつ個体が見出された.ホモ型の個体はすべて雌であり,ヘテロ型の個体はすべて雄であったことから,変異を示す染色体対は性染色体であると考えられた.したがって,日本に生育する2倍体アオキは,分布域全域にわたって性染色体を保持していると考えられる.