植物研究雑誌
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82 巻, 3 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2007 年 82 巻 3 号 論文ID: 82_3_9962
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー
  • 嶌田智 , 但野智哉 , 田中次郎
    原稿種別: 原著
    2007 年 82 巻 3 号 p. 117-125
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    本州~四国太平洋沿岸に生育する日本産ミル属の1新種ウスバミル Codium tenuifolium を記載した.本種は,藻体が葉状で薄く,小嚢は頂端が膨れる棍棒状で,栄養生殖器官を持つ.葉緑体コード rbcL 遺伝子の塩基配列による分子系統学的解析では,本種は C. latum と単系統となった(ブートストラップ値 69 %).両者の差異(Pairwise distance)は17bp(2.6 %)であった.本種は,ほとんど無分枝でより薄い藻体と,より短く幅広い棍棒状の小嚢を持つことによって C. latum と区別できる.

  • 津坂真智子 , 池田博 , 星野卓二
    原稿種別: 原著
    2007 年 82 巻 3 号 p. 126-129
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    Tsusaka et al.(2006)は2倍体アオキの核形態学的解析をおこない,2倍体アオキに性染色体が存在することを報告した.しかし,研究に用いた材料は,分布の北東部にあたる中国・四国地方産のものに限られていた.そこで,2倍体アオキが分布域全域にわたり性染色体を保持しているかどうかを確認するために,九州・沖縄地方産のアオキの核型を解析した.その結果,4番目に長い染色体対に中部動原体染色体を2本もつホモ型と,中部動原体染色体と次中部動原体染色体を1本ずつもつヘテロ型の組み合わせをもつ個体が見出された.ホモ型の個体はすべて雌であり,ヘテロ型の個体はすべて雄であったことから,変異を示す染色体対は性染色体であると考えられた.したがって,日本に生育する2倍体アオキは,分布域全域にわたって性染色体を保持していると考えられる.

  • 藤川和美 , 喜多陽子 , 大場秀章
    原稿種別: 原著
    2007 年 82 巻 3 号 p. 130-136
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    Clarke によって1876年に記載されたトウヒレン属 Saussurea yakla は,頭花が大きく,葉が羽状分裂する特徴により,トウヒレン亜属 Cyathidium 節に分類されていた.本種の染色体数が 2n = 34 で Cyathidium 節内では特異的であり, Himalaiella 属の分類群と同じ数であることが判明した.また分子系統解析でも Himalaiella 属と単系統群を形成することが推定された.そこで, Saussurea yakla の形態的特徴を再検討した.その結果 S. yaklaHimalaiella 属の共有派生形質である,一列性の羽毛状の冠毛のみをもつこと,痩果の表面に鱗状の突起をもつこと,痩果の先端が突起状に切れ込む王冠状になる特徴を有することが明らかとなった.従って,本種に新組み合わせ Himalaiella yakla (C. B. Clarke) K. Fujikawa & H. Ohba を与えた.

  • 長谷川和清 , 田中次郎
    原稿種別: 原著
    2007 年 82 巻 3 号 p. 137-144
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    本州関東地方太平洋沿岸よりヤハズグサを採集し,生殖器官の形態を観察した.雌性配偶体および生卵器は初報告である.すべての生殖器官は葉の翼部皮層上に突出する.胞子嚢は,楕円体から倒卵形で,1~4個の柄細胞を持ち,中肋に沿う斑状から帯状の胞子嚢群内に密集し,様々な発達段階のものが混在する.生卵器は,楕円体から倒卵形で,胞子嚢よりも小さく,柄細胞を1個持つ.密集して斑状から帯状の生卵器群を中肋周辺に成し,1群内での生卵器の発達は同調的である.造精器は,角柱形で,柄細胞を1~2個持つ.翼部のある範囲にある皮層細胞全てが一斉に造精器に分化し,中肋の両側に斑状から帯状の群を形成する。静岡県下田市における同種の成熟の季節性の一年間にわたる調査では,生殖器官を形成した胞子体と配偶体は,初夏から初秋にかけて採集された.生殖を行う時期は生育地間で異なり,胞子体と配偶体は同時に生育することが明らかになった.

  • 葉繽 , 大橋広好
    原稿種別: 原著
    2007 年 82 巻 3 号 p. 145-159
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    ヌスビトハギとその近縁種は多くの形態的な特徴によって典型的な Desmodium と異なることが明らかにされ,分子系統上も単系統であり(Kajita and Ohashi 1994),別属として扱われる(Ohashi and Mill 2000, Ohashi 2006).ヌスビトハギ属の学名は Hylodesmum と命名され, Desmodium はシバハギ属と改名された(大橋 2002. 本誌 77: 5960).

     ヌスビトハギ属には14種が含まれている.この属の花粉形態は幾瀬(1956)の報告に始まり,Ohashi(1973)の研究で大部分の種について明らかにされた.しかし,これらは主に光学顕微鏡による観察であったため微細形態と構造は十分には明らかにされなかった.Chen and Huang (1993)は台湾の D. laxum subsp. leptopus と subsp. laterale (= H. leptopus, H. laterale )の花粉を電子顕微鏡で観察したが,1種だけであったためヌスビトハギ類としての特徴を見いだせなかった.本研究ではヌスビトハギ属の独立性を支持する証拠の一つとして,花粉特性を明らかにするために,9種(アジア産 5種, アメリカ産 3種, アジア・アフリカ産 1種)の花粉の微細形態と内部構造を走査型および透過型電子顕微鏡を用いて調べた.

     ヌスビトハギ属の花粉は外壁に特徴があり,内層が厚く,柱状層が密で,底部層が不連続である.フジカンゾウ H. oldhamiiH. repandum (アジア・アフリカに分布)を除く他の 7種には共通の花粉形態と微細構造が見られた.北アメリカに隔離分布する3種もアジア産種と基本的に一致している.これらの花粉特徴は3溝孔型,長球状球形から亜長球形,表面模様が微小網目型と細しわ模様である.しかし,フジカンゾウでは表面模様は網目型からしわ模様型で,網目が癒合して不規則なしわとなる.層構造は柱状層が分岐した不規則な小柱で構成される.この構造はヌスビトハギ連の中では他に知られていない.また, H. repandum の花粉は溝がほとんど発達せず,3孔型と思われる.ただし, Ohashi (1973) は H. repandum の花粉は3孔型あるいは4孔型に見えるが3溝孔型あるいは4溝孔型であるとした.ヌスビトハギ属の他の種では3溝孔型である.また, H. repandum の花粉の形は亜偏球形で,ヌスビトハギ属の他の種と異なっている.

  • 佐々木豊 , 大橋広好
    原稿種別: 原著
    2007 年 82 巻 3 号 p. 160-174
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    モクゲンジは日本では古くから寺院に植栽されることが多く,中国(隋)から伝えられた植物といわれてきた.木村(1988)「図説草木辞苑」によれば,源氏物語(若紫),今昔物語(12世紀前半頃),深江輔仁:本草和名(平安初期)などの多くの古記録と共に享和元年(1801)河内名所図絵の道明寺モクゲンジの図が引用されている.北村(1977)の「飯沼慾斎草木図説木部」にも図があり,種子から念珠を作るとある.引き続いて,「帝国大学理科大学植物標品目録」(1886),「帝国植物名鑑」(Matsumura 1912)など初期の日本植物目録, 牧野・根本 (1931) 「訂正増補日本植物総覧」 でもモクゲンジは中国原産の栽培植物とされていた.

     白井(1929)「植物渡来考」ではモクゲンジを本草綱目啓蒙のセンダンヨウノボダイジュの名の下に,その来歴を「支那原産,河内国道明寺に老樹あり.推古帝の時,初めてこの寺を建て大乗経を埋めたる土の上にこの木自ら生ず.思うに当時隋より渡来せしモクレンジの種子を記念の為に下種して成長せしものなるべし」と紹介した.石井(1955)「園芸大辞典」のモクゲンジの記述も「中国では古くから墓地の樹として用いられ,従って本邦にも僧侶の手で多く輸入され,寺院等の境内に植えられている.またその種子を念珠とすることがある」と日本のモクゲンジを帰化とする見方を示している.

     近年の日本のフロラを全体的に扱った主な文献でも,日本のモクゲンジは本州(主に日本海側)の海岸に野生状態でみられるが,帰化であるまたは自生には疑問があると記述されているのが一般である(大井 1953, Ohwi 1965, 大井 1965, 北村・村田 1979, 清水 1989, 大井・北川 1992, Noshiro 1999).

     一方,モクゲンジは国内に天然に自生するとした記述もある.古くは齊田・佐藤(1917)「最新図説内外植物誌」に「信濃ノ山地ニ多ク産スル」と記述されている.この本には日本にない植物が多く含まれているが,このモクゲンジは長野県の山地に自生の記録とみてよいだろう.

     次いで1930年代から日本各地の自生記録が少なからず発表されるようになった.宮城県から1935年にほぼ同時に 3件の自生報告があった.次いで中井(1936)によって山口県牛島が本土での初めてのモクゲンジ自生記録として「植物研究雑誌」 に発表された.引き続き小林(1939)が青森県境の秋田県岩館村(現八森町)海岸の自生を「植物及動物」に報じた.「牧野日本植物図鑑」(牧野 1940)では,但馬・越前並びに周防の一小島に野生し,通常は栽培されるとした.奥山(1962)は本州の海に近い所に野生があるとし,日本における分布図を示した.さらに,外山(1974)は対馬の自生を本誌に報じた.モクゲンジを日本自生とする報告はここに挙げた全国的な出版物の他にも地方植物誌や同好会誌に多数が記録されている.

     今日野生状態で見られるモクゲンジが帰化または栽培からの逸出であるとする根拠ははっきりしない.野生と見られる集団が日本で知られたよりも前から中国渡来として寺院などに植栽されていたことが渡来説の根拠になったのかもしれない.

     一方,モクゲンジが日本の天然自生であるとする根拠は十分であろうか.一般にはある植物が人為の及んでいないと思われる自然の場所にある程度の集団をなして野生しているならば,この植物は天然分布であり自生と判断されると思われる.しかし,モクゲンジの場合には帰化・逸出説があるので,自然の場所に野生していることだけを根拠とするだけではなく,自生であると判断する追加的な根拠も必要であると思われる.

     われわれは宮城県気仙沼市におけるアカガシの天然自生を明らかにするために,自生地と気仙沼との植生構成種の比較を試みた(大橋他 2006).しかし,モクゲンジについての生態調査は佐々木(1973,1983)による宮城県,村田(1999)および中込・大久保(1999)による山梨県内の現地調査報告があるにすぎない.モクゲンジ自生地の調査も不十分であると思われる.

     佐々木は1973年以来宮城県内各地を現地調査し,モクゲンジの生態と分布を詳しく調べてきた.大橋も宮城県の天然記念物調査からモクゲンジに興味を持ち,最近佐々木とともに調査を行ってきた.

     本報告ではモクゲンジの日本における分布と宮城県内の分布・生態とを調べ,その結果を基礎としてモクゲンジは日本に天然に野生する植物であることを明らかにした.また,この調査過程で宮城県内4ヶ所において淡黄色の花をつける個体を見出したので,これを新品種ウスギモクゲンジとして記載した.

  • 五百川裕 , 大橋広好
    原稿種別: 短報
    2007 年 82 巻 3 号 p. 175-177
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 正誤
    2007 年 82 巻 3 号 p. 177
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー
  • 金井弘夫
    原稿種別: 新刊
    2007 年 82 巻 3 号 p. 178
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー
  • 金井弘夫
    原稿種別: 新刊
    2007 年 82 巻 3 号 p. 178
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー
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