2017 年 92 巻 1 号 p. 34-43
マメ科マメ亜科インゲンマメ連に属するShuteriaは4–5 種からなり,スリランカ,インド,ヒマラヤ東部(ネパール・シッキム),アッサムから東南アジアおよび中国南部に分布するとされている(Schrire 2005).Shuteria はヤブマメ属 Amphicarpaea, ノササゲ属Dumasia,Cologania に近縁とされている(Lackey 1981).Shuteria の1 種S. hirsuta Baker (Fig. 1) は分類上の位置が不安定で,クズ属 Pueraria とされたり,中国ではAmphicarpaea lineata としても記載されている.最近のFlora of China Vol. 10 Fabaceae でもSa and Gilbert (2010) はS. hirsuta の正名として誤った学名S. ferruginea とA. lineata とをShuteria として認めている.一方,Ohashi and Ohashi (2016) は花粉形態に基づいてS. hirsuta をShuteria と認め,A. lineata をS. hirsuta の異名とした.
本研究は Shuteria hirsuta の分類上の不安定な位置を検討するために S. hirsuta とその近縁種の分子系統解析を行い,その結果に基づいて系統樹 (Figs. 2, 3) を作成した.Shuteria hirsuta はShuteria (S. vestita) のクレードと離れて,意外にも中南米のCologania に類縁があった.形態上はS. hirsuta はShuteria の他の種とは線形の豆果に多数の種子を入れ,種子の間には隔膜があることで異なっていた.しかし,S. hirsuta とCologania は花,豆果,染色体数の違いが明瞭であり,同属と見なすことはできない.Cologania はメキシコから中南米と南米に分布域があり,インド〜中国のShuteria とは分布上も著しく隔離している.このため,S. hirsuta に基づいて,新属Harashuteria K. Ohashi & H. Ohashi を設立した.また,新組み合わせHarashuteria hirsuta (Baker) K. Ohashi & H. Ohashi を提案した.属名は原 寛先生(1911–1986)を記念した.