植物研究雑誌
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東京都産ヤナギ科の雑種シバオノエヤナギ
吉山 寛山口純一
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2020 年 95 巻 6 号 p. 336-340

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抄録

著者のひとり山口は,2009 年に東京都羽村市の多摩川沿い崖下(35°46 ′ 19 ″ N 139°17 ′ 46 ″ E, alt. 138 m) において,シバヤナギとオノエヤナギとの交雑種と推定される低木を発見した.周辺はシバヤナギの群落地で,樹形や枝ぶりはシバヤナギによく似るが,成葉の表面主脈と側脈は凹入して裏面に細脈までが突出し,新葉は縁が裏側に強く巻きこむなど,オノエヤナギが持つ葉の特徴をよく示していた.2014 年に挿枝を採り以後八王子市の吉山雑種柳観察園で育成し,5 年後の2019 年には高さ4.5m の中低木となり多数の花序をつけた.樹形,葉や花の形質,胚珠数や木部に隆起条があるなど,本個体が示す多くの形質からシバヤナギとオノエヤナギとの交雑個体であると結論した.この雑種は杉本順一が静岡県植物誌(1984) に「Salix sachalinensis × japonica シバオノエヤナギ(新称)間種(シバヤナギ×オノエヤナギ)」として記録したものと多分同じと思われるが,雑種式だけで記載がない.また,山口(2016) と吉山・茂木(2019) も「シバオノエヤナギ」として記録している.そこで我々は東京産の標本をタイプとして学名と記載をつけ,ここに発表した.

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© 2020 植物研究雑誌編集委員会
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