植物研究雑誌
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香川県におけるアカヒゲガヤ(イネ科)の生育地と種子発芽能力について
茨木 靖久米 修
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2020 年 95 巻 6 号 p. 348-353

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抄録

香川県丸亀市で見つかった南方系の絶滅危惧種アカヒゲガヤHeteropogon contortus (L.) P. Beauv. ex Roem. & Schult. について,生育地の状況並びに種子発芽能力について報告する.本種は,多年生のイネ科植物で,これまで沖縄県にわずかに生育するのみとされ,同県の絶滅危惧IA 類(CR) にも指定されている.本種の香川県における産地は,丸亀市の城山中腹で,尾根にある開けた乾燥地にのみ生育していた.同地の土壌は風化の進んだ凝灰角礫岩であり,雨水の浸透性が悪いため,降雨後も直ちに乾燥し,土壌が形成され難い事から,植物の生育には厳しい地質である.生育環境が極めて特異で植生に乏しい場所であることや,ごく限られた出穂期以外は他種との識別が困難であることから,各地の植物相調査などでも見過ごされてきている可能性が否定できない.生物相の調査にあたっては,更なる注意が必要と思われる.また,発芽試験により,本種の種子は高い発芽能力を有し,発芽後一年以内に開花結実することも明らかとなった.

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© 2020 植物研究雑誌編集委員会
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