植物研究雑誌
Online ISSN : 2436-6730
Print ISSN : 0022-2062
ISSN-L : 0022-2062
日本のミヤマアズマギク類(キク科)
門田 裕一 三浦 憲人
著者情報
ジャーナル 認証あり

2022 年 97 巻 1 号 p. 1-22

詳細
抄録

ミヤマアズマギク(キク科)の学名についてはErigeron thunbergii A.Gray var. glabratus A.Grayあるいは亜種としてE. thunbergii subsp. glabratus (A.Gray) Kitam. & H.Hara とされることが多かった.ところが,ハーバード大学GH 所蔵のタイプ標本を調べた結果,ミヤマアズマ ギクとは異なることに気付いた.タイプ標本の産地と考えられる青森県東通村尻屋で調査を行ったところ,このタイプ標本と同一の分類群と考えられる植物が見つかっ た.この植物は広義のアズマギクErigeron thunbergii と は異なる特徴を持った別種と考えられたので,産地に因 み,これをムツアズマギクE. mutsuensis Kadota として 命名・発表した. 一方,ミヤマアズマギクはアズマギクと花茎の有毛性や舌状花の長さ,冠毛の長さと色に違いがあり,別種とみなすのが妥当であると考える.ミヤマアズマギクの学名 は種レベルで最も古いE. alpicola Makinoが正名となり, 東京都立大学牧野標本館所蔵の岩手県早池峰山の標本をレクトタイプとして選定した.ミヤマアズマギクの学名 変更に伴い,アポイアズマギクvar. angustifolius (Tatew.) Kadota,ユウバリアズマギクvar. haruoi (Toyok.) Kadota,ジョウシュウアズマギクvar. heterotrichus (H.Hara) Kadota,キリギシアズマギクvar. kirigishiensis (Inagaki & Toyok.) Kadota,シコタンアズマギクvar. schikotanensis (Barkalov) Kadotaを変種として認め,E. alpicolaの下に 組み替えた.また,北海道占冠村の鵡川沿いの赤岩青巌 峡から新変種ケイリュウアズマギクvar. riparius Kadota を記載した.また,裸名であったシロバナミヤマアズマ ギクに記載を与え,f. albus Kadota とした.

著者関連情報
© 2022 植物研究雑誌編集委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top