葉と対生する巻きひげや花序の構造上の位置づけについて長く議論されているブドウ科植物について,小石川植物園(東京都)で栽培あるいは自生する植物を主に,千葉県,埼玉県,高知県などの野外でも調査観察し,各種についてシュート構成を記載し,比較検討した.その結果,1) ヤブガラシの花序は巻きひげの無い節から出る短枝に頂生するという見方を提唱した.2) 巻きひげの最初の苞のつき方が,母軸の普通葉の互生葉序と連続することから,巻きひげが母軸から続くシュートの上部であり,長枝の成長は仮軸分枝により継続するという説を再評価した.3) 側枝の第1 葉(前出葉にあたる)について,観察した種類のうちノブドウだけが母軸に対して向軸側(蓋葉から遠いほう)に位置し,他ではすべて背軸側に位置していた.4) ツタの短枝は毎年対生状に2 葉をつけ,その間に花序と巻きひげおよび翌年に短枝を形成するはずの越冬芽をつけることが観察された.今後その構造を詳しく解析することが期待される.