植物研究雑誌
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モウソウチク(イネ科)が半世紀以上の栄養成長期を経て一斉開花した
小林 慧人 西山 典秀柏木 治次柴田 晶三
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2022 年 97 巻 3 号 p. 145-155

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抄録

タケ(イネ科)は長寿命の一回繁殖性を示す植物であると知られるが,実生から有性生殖までを評価できた研究はほとんどない.2021 年7 月,京都大学上賀茂試験地(京都府)と富士竹類植物園(静岡県)で実生の段階より保育されてきたモウソウチクPhyllostachys edulis (Carrière) J.Houz. [= P. pubescens (Pradelle) J.Houz., P. heterocycla (Carrière) Matsum. var. pubescens (J.Houz.) Ohwi] の林が一斉開花の様相を示した.筆者らはこの珍 しい開花現象を観察し,過去の栽培記録や両施設のスタッフらへのインタビューに基づき,開花時の林齢がそれぞ れ66 年,67 年であると推定した.先行研究と合わせて考えると,日本国内には66–69 年の寿命で一回繁殖性を示すモウソウチクがあることがわかった.一方,現在日本各地に生育するモウソウチク林はおよそ単一クローンと考えられており,中国より導入後およそ300 年が経過する中で未だ一度も一斉開花していない.これらから,モウソウチクの繁殖特性などの生活史の様式には,種内変異があることが示唆された.

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© 2022 植物研究雑誌編集委員会
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