植物研究雑誌
Online ISSN : 2436-6730
Print ISSN : 0022-2062
ISSN-L : 0022-2062
琉球列島産スズメノヒエ属(イネ科)について
茨木 靖 横田 昌嗣赤井 賢成木場 英久
著者情報
キーワード: Aquatic plant, Okinawa, Ryukyu, wetland
ジャーナル 認証あり

2023 年 98 巻 6 号 p. 293-303

詳細
抄録

琉球列島より,マルミスズメノヒエの新変種イリオモテスズメノヒエ(新称)Paspalum scrobiculatum L. var. iriomotense Ibaragi, Yokota & Akai (Gramineae) を記載した.この植物は,母種に比べて小穂が大きく,葉身や葉鞘に長軟毛がある点で異なる.また,スズメノヒエ P. thunbergii Kunth ex Steud. にも似ているが,2つの総状花序が稈の先に二又状につくことや,第一小花の護穎に顕著な皺があること,さらに叢生する稈の本数が少ないこと,そして生息地が浅い水湿地の中であることなどで異なる.また,台湾などに産するP. scrobiculatum var. commersonii (Lam.) Stapfも本変種に似ているが,後者は2本か,それ以上の総状花序を持ち,長さ約2 mmの小さな小穂(イリオモテスズメノヒエでは2.8–3.5 mm長)を持つことなど,いくつかの特徴で異なる.また,マルミスズメノヒエの変種として扱われてきたスズメノコビエを,マルミスズメノヒエの亜種として扱い,新ランクの学名 P. scrobiculatum L. subsp. orbiculare (G.Forst.) Ibaragi, Yokota & Akai を提案した.ケマルミスズメノヒエ var. velutinum Hack. をこの亜種に属する変種として位置付け,シノニムであるP. formosanum Honda のレクトタイプ指定も行った.日本産スズメノヒエ属の検索表についても示した.

著者関連情報
© 2023 植物研究雑誌編集委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top