日本の心不全患者は高齢化の進行とともに増加しており,急性心筋梗塞患者の3倍以上が毎年入院する深刻な状況である。心不全患者には高齢者が多く,サルコペニア(筋量・筋力低下)や,疾患に起因するカヘキシア(体重・筋肉・脂肪減少)を合併しやすい。サルコペニアの診断基準はAWGSやEWGSOPなど複数存在し,国際標準化を目指すGLISも登場している。しかし,心不全患者では特に筋肉量評価が難しい。生体インピーダンス法やDXA法は体内水分量の影響を受けやすく,心不全増悪時の評価は信頼性が低い。また,ペースメーカー患者への測定禁忌や急性期評価の困難さも臨床的な課題だ。カヘキシアは慢性心不全に伴う代謝異常で,体重減少や炎症,食欲低下,筋力低下などを特徴とする。診断基準はEvans基準やAWGC基準などがあり,AWGCはより簡便に早期診断を可能としている。心不全患者では,体重変化における体液変動の影響が著しく,入院時の体重評価には慢性心不全とは異なる基準が必要となる場合もある。カヘキシアとサルコペニア,低栄養,フレイルは概念が重なり,多くの患者で併存している。炎症やホルモン異常が悪循環を形成し,予後不良やQOL低下につながるため,早期診断・介入が重要である。心不全患者の診療には多職種連携によるアプローチが不可欠である。循環器内科医だけでなく,各専門職が患者全体を俯瞰し,必要とされるケアを見極めることが求められている。