抄録
25歳,男性.自動二輪運転中に乗用車と接触し受傷した.Ib型肝損傷,Ia型肺挫傷の診断で当院に紹介となった.腹部血管造影で肝動脈門脈シャント(以下APシャント)の合併を認めた.3回にわたる腹部血管造影でAPシャントを認める肝動脈枝にゼラチンスポンジ片で動脈塞栓(以下TAE)を施行したが,一部のAPシャント残存のまま第21病日に退院,外来経過観察となった.退院後,腹部造影CTでフォローアップを行い,受傷後約1年2ヵ月でAPシャントの完全閉鎖を認めた.
鈍的肝損傷に合併するAPシャント症例に対して,一時塞栓物質によるTAEでシャント血流を減少させ,外来経過観察中に完全閉鎖が得られた.同病態の治療に際して,示唆的な経過と考えられたため報告する.