2016 年 30 巻 1 号 p. 18-22
30歳,男性.工事現場で約2mの高さの斜面を足側から転落した際,立てかけていた鉄筋が右陰嚢より約50cm刺入した.CT上,鉄筋は腹壁内を通り,右鎖骨中線上,肋骨弓の高さで腹腔内に達していた.緊急開腹術を施行し,鉄筋先端から背側に離れた位置に約2cmの横隔膜損傷を認め,同部を縫合閉鎖した.その他の臓器損傷は認められなかった.横隔膜損傷部が鉄筋先端から離れた位置にあったのは,受傷時とその後の体位の変化で先端と臓器の位置関係が変わったためと考えられた.杙創症例では刺入経路の十分な評価を行うとともに,受傷時と受傷後の体位変化による刺入物移動の可能性を念頭に置く必要がある.