抄録
【目的】鈍的重症外傷患者において凝固・線溶系マーカーがmassive transfusion (以下MT) (24時間以内における10単位以上の赤血球輸血) の予測因子になり得るか否かを検討した. 【方法】Japanese Observational Study for Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma (J–OCTET) データベースの鈍的外傷患者をMTとnon–MT群に分類し, 目的変数をMTの有無, 説明変数を年齢, 性別, 搬入時バイタルサイン, Glasgow Coma Scale, ヘモグロビン値, 血小板数, 乳酸値, PT–INR, D–ダイマー値, フィブリノーゲン (Fbg) 値として, ステップワイズロジステッィク回帰分析を行い, MT予測因子を抽出した. さらに, 抽出した項目について, receiver operating characteristic (ROC) 解析を行い, Youden indexにてoptimal cut–off値を算出した. 【結果】心拍数 (per 10 bpm) [Odds ratio (OR), 1.72 ; 95%信頼区間1.47–2.05] , 体温 [0.70 ; 0.53–0.94] , Fbg (per 10 mg/dL) [0.89 ; 0.84–0.94] がMTの独立予測因子であった. ROC曲線下面積は, 心拍数 : 0.81, 体温 : 0.60, Fbg : 0.75であった. Optimal cut–off値は心拍数96 bpm (感度73.7%, 特異度76.6%), 体温36.3°C (感度66.7%, 特異度48.7%), Fbg 190 mg/dL (感度61.4%, 特異度80.2%) であった. 【結語】鈍的重症外傷におけるMTの必要性に関して, Fbg値は心拍数, 体温に比較し, 特異度の高い予測因子となる可能性がある.