2016 年 30 巻 3 号 p. 356-364
目的 : 頭部外傷では播種性血管内凝固症候群 (以下DIC) を合併することが多く, DIC合併症例では予後不良である. 頭部単独外傷におけるDICと組織低灌流の関係を検討した. 方法 : Japanese Observational Study for Coagulation and Thrombolysis in Early Trauma (J–OCTET) データベースとして, 18歳以上のinjury severity score≧16の外傷患者を後ろ向きに収集した. そのデータベースから, 頭部単独外傷患者 (TBI) (頭部abbreviated injury score (AIS) ≧4かつ頭部以外のAIS<2) と非頭部外傷患者 (non–TBI) (頭部以外のAIS≧3かつ頭部AIS<2) の患者を抽出し比較した. 結果 : 160人のTBI患者, 186人のnon–TBI患者が対象となった. TBI群では搬入時の全身性組織低灌流の指標としての乳酸値と凝固線溶系検査や血小板数, DICスコアに相関を認めなかったが, non–TBI群では, 搬入時の乳酸値と凝固系検査に相関を認めた. Non–TBI群におけるロジスティック回帰分析では, 乳酸値はDICの独立した予測因子であったが, TBI群ではその関係性は認めなかった. 結語 : 頭部単独外傷におけるDICは, 頭部外傷非合併患者とは異なり, 全身性組織低灌流と関係なく発症することが考えられる.