日本外傷学会雑誌
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日本外傷学会将来計画委員会報告:J-OCTET
治療指針としての『外傷死の三徴』の有用性の検証と新基準の提案
遠藤 彰白石 淳久志本 成樹大友 康裕齋藤 大蔵早川 峰司小倉 裕司村田 希吉萩原 章嘉佐々木 淳一松岡 哲也植嶋 利文森村 尚登石倉 宏恭武田 宗和金子 直之加藤 宏工藤 大介金村 剛宗渋沢 崇行萩原 靖古郡 慎太郎仲村 佳彦前川 邦彦真山 剛矢口 有乃金 史英高須 修西山 和孝
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2016 年 30 巻 3 号 p. 419-423

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抄録

 背景と目的 : 「外傷死の三徴」はダメージコントロールを行う根拠のひとつとして長らく使用されてきた. その従来基準 (PT–INR>1.5, pH<7.2, 体温<35°C) を検証するとともに, 治療方針決定に有用な新たな基準を構築した. 対象と方法 : 15施設に2012年の1年間に搬送されたISS≧16の患者を後方視的に検討した. 結果 : 計796例を解析した. 従来基準を1項目以上満たしたときの死亡予測感度は36%, 特異度88%であり, 3項目では感度4%, 特異度100%であった. 凝固・線溶異常, アシドーシス, 低体温の三徴の枠組内で各種項目の転帰予測精度・閾値・影響力を検討し, FDP>90μg/mlを大項目, BE<–3mEq/Lと体温<36°Cを小項目とする新基準を構築した. 新基準は大項目単独または小項目を同時に満たしたときに感度83%, 特異度67%で転帰を予測した. 結論 : 従来基準はダメージコントロール治療の指針として不適当と考えられた. 新基準は方針決定の客観的根拠となり得る.

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© 2016 一般社団法人 日本外傷学会
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