2016 年 30 巻 3 号 p. 419-423
背景と目的 : 「外傷死の三徴」はダメージコントロールを行う根拠のひとつとして長らく使用されてきた. その従来基準 (PT–INR>1.5, pH<7.2, 体温<35°C) を検証するとともに, 治療方針決定に有用な新たな基準を構築した. 対象と方法 : 15施設に2012年の1年間に搬送されたISS≧16の患者を後方視的に検討した. 結果 : 計796例を解析した. 従来基準を1項目以上満たしたときの死亡予測感度は36%, 特異度88%であり, 3項目では感度4%, 特異度100%であった. 凝固・線溶異常, アシドーシス, 低体温の三徴の枠組内で各種項目の転帰予測精度・閾値・影響力を検討し, FDP>90μg/mlを大項目, BE<–3mEq/Lと体温<36°Cを小項目とする新基準を構築した. 新基準は大項目単独または小項目を同時に満たしたときに感度83%, 特異度67%で転帰を予測した. 結論 : 従来基準はダメージコントロール治療の指針として不適当と考えられた. 新基準は方針決定の客観的根拠となり得る.