日本外傷学会雑誌
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臨床検討
当院における重症腹部実質臓器損傷の開腹手術症例についての検討
坂平 英樹宮本 勝文大石 達郎高橋 応典宮永 洋人上村 亮介金本 義明吉岡 佑太小山 隆司
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キーワード: 肝損傷, 膵損傷, 開腹手術
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2017 年 31 巻 4 号 p. 435-441

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抄録

  [目的] 重症腹部実質臓器損傷の開腹適応について検討する. [方法] 2011年から2015年の当院における III 型肝損傷・脾損傷・膵損傷 (来院時心肺停止を除く) の19症例を, 開腹と非開腹の2群に分け比較検討を行った. [結果] 肝損傷 III a 2例・ III b 6例, 脾損傷 III a 3例・ III b 6例, 膵損傷 III a 2例・ III b 2例を調査, 10例で開腹手術を要した. そのうち5例は継続するショックで, 3例は腹腔内汚染疑いで, 1例は穿通性損傷のため開腹した. 残りの1例は循環動態の安定した肝損傷 III bと膵損傷 III aの合併損傷であった. 開腹群において, 来院時ショック症例の割合とISS (Injury Severity Score) は高い傾向にあったが, 有意差は示されなかった. [結語] 開腹となった症例は, ほとんどが継続するショックや腹腔内汚染の合併によるものであったが, 循環動態の安定した症例でも, 胆汁漏や膵液瘻合併の可能性のあるものは開腹適応となり得るかもしれない.

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© 2017 一般社団法人 日本外傷学会
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