日本外傷学会雑誌
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症例報告
被膜破裂により軽快した肝コンパートメント症候群の2例
高岡 諒多河 慶泰田口 裕司谷口 智哉南 和伸
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2019 年 33 巻 4 号 p. 403-408

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抄録

 肝コンパートメント症候群 (hepatic compartment syndrome, 以下HCS) は肝被膜下血腫のまれな合併症であり, 肝循環障害を来すため血腫の減圧処置が推奨されている. 鈍的外傷に合併し被膜破裂により軽快したHCS2例を報告する. 19歳女性と52歳男性は各々交通事故と墜落により肝被膜下血腫を発症した. 肝機能は数日後に著しく悪化し, 血管造影における右門脈の逆流所見, 肝実質CT値の低下, および血中LDH高値はHCSを示唆した. 肝動脈塞栓術 (transcatheter arterial embolization, 以下TAE) を施行後, 腹腔内出血の増量に続いて肝機能は改善し, 血腫の自然破裂と判断した. TAEは血腫増大の抑制と破裂後の再出血予防に有効と考えられた. また血腫が自然破裂した場合, 減圧処置は不要であることが示された.

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© 2019 一般社団法人 日本外傷学会
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