2020 年 34 巻 3 号 p. 65-69
症例は38歳男性. 自動車運転中に電柱へ衝突し当院に搬送された. 医師接触時より呼吸・循環は安定していたが, 右上肢の著明な知覚過敏と麻痺を認めた. CTで頸椎骨折を示唆する所見はなかった. 第2病日に腕神経叢損傷を疑い頸部MRIを撮像すると, 第3頸椎から第6頸椎にわたる脊髄の右背側に, T2強調画像でモザイク状の血腫を認めた. 症状・画像所見から頸髄硬膜外血腫と診断した. 麻痺は経時的に改善傾向を示しており, 保存的加療の方針とした. 第7病日に撮像した頸部MRIでは血腫は退縮していた. 麻痺も改善し, 第9病日に退院となった. 外傷に伴い上肢に単麻痺を認める場合, 頸髄硬膜外血腫を鑑別にあげ精査する必要がある.