2021 年 35 巻 3 号 p. 233-239
穿通性外傷による椎骨動脈損傷はCTによる評価に基づく治療が有効とされるが, 緊急性が高い状態ではCTを施行することは容易ではない. 局所所見から椎骨動脈損傷を疑い, 用手的圧迫止血下椎骨動脈塞栓術を施行した症例を報告する. 症例は55歳男性, 包丁により頸部を自傷した. 来院時活動性出血と循環不全を呈していたため外科的処置を開始し, 右内外頸静脈損傷と椎骨動脈損傷を認めた. 椎骨動脈損傷は外科処置困難であったため, 用手的圧迫止血下動脈塞栓術にて止血を得て, 術後11日目に転科した. 循環不全を伴う活動性出血を有する穿通性頸部外傷患者の治療において, 椎骨動脈損傷に対する用手的止血下塞栓術が選択肢となる可能性がある.